都会の夜にたたずむ男性=東京都千代田区で、西夏生撮影(写真と本文は関係ありません)

 平等に向けた取り組みが「やり過ぎ」と感じる日本のZ世代の男性は、同世代の女性や他世代の男性の約1・5倍に上ることが、国際的な意識調査で明らかになった。Z世代男性は他世代に比べ、平等が推進される中で何らかの不利益を感じている様子が浮かぶ。

何らかの不利益、実感?

 調査はフランスの民間世論調査会社イプソスが2~3月、欧米やアジア、アフリカなどの各地域の29カ国計約2万1800人を対象にオンラインで実施。日本では983人(男性498人、女性485人)から回答を得た。

平等の推進は「やり過ぎ」と回答した世代・男女別の割合=イプソスの資料から

 それぞれの国で、「すべてのグループの人々の平等を促進する試み」について、①やり過ぎ②少しやり過ぎ③適切④もう少し前進させる必要がある⑤さらにもっと前進させる必要がある⑥わからない――の6択で尋ねた。

 日本では、Z世代(1996~2012年生まれ)の男性は30%が「やり過ぎ」と回答。これは同世代女性の20%や、ミレニアル世代(80~95年生まれ)、X世代(66~79年生まれ)、ベビーブーム世代(45~65年生まれ)の男性(いずれも20%強)と比べて、10ポイント近く高かった。

「最も不平等・不公正な扱いを受けているグループはどれか」について、Z世代の男女別の回答=イプソスの資料から

 また、Z世代の回答の中で顕著だったのは「最も不平等、不公正な扱いを受けているグループはどれか」という問い。

 男女ともに身体障害者を挙げた人が最も多かった(女性は最多タイ)一方、「トランスジェンダー、ノンバイナリー」「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル」など性的少数者、注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症といった「ニューロダイバーシティー(脳や神経を原因とする個人の違いを多様性と捉える概念)を持つ人々」と回答したZ世代の女性は、同世代の男性の2倍に上り、差別に対する意識の違いや敏感さが明確に表れた。

 また、Z世代男性は「身体障害者」「メンタルヘルスに不調を抱える人々」「女性」に加えて、「男性」を挙げる人が多かった。

 特に「男性」と答えた人の割合は女性の3倍で、Z世代男性が平等の促進によって、何かしらの不利益を感じている現状が浮かんだ。

「成功は能力か環境か」 世代間で差

 世代間で考え方に顕著な違いが見られたのは、「人の成功は何によって決まるか」という問いだ。

成功の可能性は「自身の強みと努力で決まる」と回答した世代・男女別の割合=イプソスの資料から

 ベビーブーム世代は男女ともに50%近くが、「その人自身の強みと努力で決まる」と答えたのに対し、Z世代は男女ともに30%以下。また、男性よりも女性の方が、成功の可能性は自身の力ではなく、環境などの外的な要因によって左右されると考える傾向が強かった。

 ベビーブーム世代とZ世代の差は、世界の平均(11ポイント)の倍に上っており、日本は特に、能力主義社会かどうかという点について、世代間の考え方の差が大きい様子がうかがえる。

 イプソス日本法人の内田俊一社長は、Z世代男性の多くが平等に向けた取り組みを「やり過ぎ」と考える背景について、「平等な社会が構築されようとする中で、逆差別と感じられることがあったのでは」と推察する。その上で、「Z世代が自らの実力や努力で成功できると思えないのは、平等な機会が広がっても、上の世代と同様の恩恵は受けられないと感じているからではないか」と分析した。【稲垣衆史】

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