熊本県立熊本工業高(熊本市中央区)の1年生(当時16歳)が2022年10月に自殺した問題で、県教育委員会が設置した第三者委員会は21日、部活動の上級生から受けたいじめが自殺に影響を与えた可能性が高いとする報告書を答申した。生徒から相談を受けた顧問らも、相談後に生徒にさらに厳しく接するよう上級生に伝えたとして「学校の体制に本質的な問題があった」と結論付けた。
報告書によると、上級生の「シメ」と称する行き過ぎた指導5件をいじめと認定。生徒が22年4月に入部して以降、上級生が生徒を含む1年生部員らを炎天下の屋上に30分以上立たせ、練習態度や礼儀を指導するなかで「殺すぞ」などと言ったほか、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で練習の欠席を認めなかったり、同じ失敗を繰り返した場合は練習に参加させないことを伝えたりするメッセージを送っていた。
一連のいじめには当時の3年生3人が主に関わり、2年生が立ち会うケースもあった。一方、生徒は顧問に相談していたが、顧問や外部指導者は「(生徒の)メンタルが弱い」とみなしていたという。
第三者委は上級生の行為が継続的だったとし、「当たり前のように積み重ねられた指導スタイルと部活の構造が事案を引き起こした」と指摘。第三者委会長の八ツ塚一郎熊本大大学院教授は「生徒に寄り添い、組織的な対応に切り替えるなどしていれば、最悪の結果は防ぐことができたかもしれない」と述べた。
県教委は報告書を各学校に通知し、熊本工高に再発防止策の策定を求める。熊本工高の上村一夫教頭は「報告書を受け取ったばかりなのでコメントは控えたい」としている。
県教委は遺族の意向で生徒の性別や部活名などを明らかにしていない。【山口桂子】
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