沖縄県伊江村は21日、沖縄戦の戦没者を慰霊する「平和祈願祭」を同村西江前の芳魂之塔で開いた。遺族、名城政英村長や玉城デニー知事ら約150人が参列し、黙とうをささげた。4月21日は、79年前の沖縄戦で伊江島の戦闘が終結した日。伊江村は毎年、同日に慰霊祭を実施している。
芳魂之塔の「平和祈願祭」に参列し手を合わせる遺族=21日、沖縄県伊江村西江前父親の山城真繁さんの名前が刻まれた刻銘版の前で蔵下登子さん(80)=伊江村川平=は「二度と戦争が起きないよう見守ってください」と祈りをささげた。
車いすで訪れた島袋キヌ子さん(89)=沖縄市=は、親族11人と一緒に島で戦死した父親の宮城武助さんに手を合わせた。島袋さんは「家族が元気で過ごしていると報告した。今年は、やしゃごも参加した。来年も来ます」と話した。
知念シゲさん(86)=伊江村西江前=は沖縄戦中、今帰仁村に避難。故郷の伊江島が米軍艦に取り囲まれ、攻撃を受けて燃えているのを見て母が心配していたのを覚えている。防衛隊だった父が犠牲になり「ここに来ると、お父さんのことを思い出して涙が出る。とっても優しい人だった」と声を詰まらせた。
芳魂之塔=21日、伊江村西江前宮城正仁さん(94)=伊江村川平=は米軍艦が島を包囲する中、夜中に浮き玉を付けた馬に乗って海を渡り、本部半島に逃れた。防衛隊だった父の刻銘に「お父さん、私は長生きしていますよ」と語りかけ、「戦争が二度とないように祈っている」と 手を合わせた。父やきょうだい、親戚を失った大城和子さん(82)=伊江村西江上=は「伊江島には雨が降るように弾が落ちていたと聞いた。ウクライナの映像を見ると、沖縄戦を思い出す」と語った。
名城村長は「先の大戦の記憶を風化させることなく、命の尊さ、平和のありがたさ、戦争の悲惨さを子々孫々に伝えていきます」とあいさつ。玉城デニー知事も「恒久平和の世界を目指し、たゆまぬ努力を続けていく」と誓った。
伊江島では、1945年4月16日から6日間にわたって激しい戦闘があり、島の住民約1500人と旧日本兵約2千人が亡くなった。同塔は51年に、 村民らの浄財で建立した。(北部報道部・下地広也、社会部・當銘悠)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。