全線で運行を再開したのと鉄道。被災地を走るその姿は、多くの人々を笑顔にした=石川県七尾市内で2024年4月6日午前9時51分、深尾昭寛撮影

 能登半島地震で被害を受けた石川県の第三セクター「のと鉄道」が6日、全線で運行を再開した。沿線の高校の入学式や始業式に間に合った形となる。久しぶりに地域を走る鉄道車両を、人々は大喜びで出迎えていた。【深尾昭寛】

 「新年度、新学期に間に合った。地域にとって大きな意味を持つ再開だ」。6日、穴水駅(穴水町)での出発式のあいさつで、同鉄道の中田哲也社長は力を込めて語った。また社員に対し「被災しながらも家族を、地域を思い、鉄道への愛を忘れずに前に進んだことに心からの敬意と感謝を表します」と声をふるわせながら述べた。

 のと鉄道は穴水駅―七尾駅(七尾市)を結ぶ。JR西日本所有の路線を使用して運行する第2種鉄道事業者だ。利用者全体の7割が定期利用で、その多くが高校生という。

 だが、元日の地震で、線路がずれたり、駅ホームが沈下したりと被害を受けた。JR西主体で復旧工事が行われ、2月15日に七尾駅―能登中島駅が、残る区間が4月6日に運行を再開した。1月末の段階では全線再開見通しは「おおむね4月中」とされていたが、新学期に間に合い、JR西は「住民の皆さんに工事に必要な土地を提供していただいた。順調に進んだ要因の一つ」と説明する。

手を振ったり、カメラを向けたりして車両を見送るホームの人々=石川県穴水町の能登鹿島駅で2024年4月6日午前8時54分、深尾昭寛撮影

 全線運行再開の日、各駅を訪ねて回った。桜の名所として知られる能登鹿島駅(穴水町)で出会った同町の介護福祉士兼調理師の60代女性は「待ちに待っていた」と笑顔。この日桜はまだ大半の花が開く前だったが、駅には観光客の姿もあり、大阪府から訪れた70代女性は「鉄道は地域にとって大事な足。良かったです」と話した。

 西岸駅(七尾市)は、アニメ「花咲くいろは」に登場する架空の駅「湯乃鷺(ゆのさぎ)駅」の駅名看板が設置される。同駅を発着する列車の姿に「時刻表通りに動いている!」と夫と一緒に歓喜していたのは穴水町の70代女性だ。車で移動中に鉄道車両が見えて「思わず駅まで飛んできた」という。女性は「有るものが無くなってまた復活した。うれしい」と興奮気味に語り、元気いっぱいに駅を後にした。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。