障害者向けの入力スイッチ(右)とリモコンに信号を送るスマートフォンをつなぐ、開発中のアダプター=松尾光晴さん提供

 「スマートフォンと障害者向けのリモコンをつなぐ専用アダプターをつくってほしい」。ある医療的ケア児の家族から要望を受けて、障害者の補助器具を製造するベンチャー企業「アクセスエール」(大阪府茨木市)がクラウドファンディング(CF)で商品化に向けた支援を呼びかける。募集は8月末まで。

 家電大手パナソニックの技術者だった松尾光晴さんは、社内ベンチャーで障害者用のリモコンを開発した後に20年に独立して同社を設立。障害者がスマホやタブレットを通じて簡単に操作できる家電用リモコンなどを製造・販売している。

複数のアダプターを介した接続(上)に比べ、開発中のアダプターは接続をシンプルにできる=松尾光晴さん提供

 全身の筋力が低下する難病「脊髄性筋萎縮症」がある都内在住の男児(6)の母親は今春、「楽しみの幅を広げてほしいと」と同社のリモコンを購入した。リモコンはスマホにダウンロードした専用アプリを使い、大きく表示されたボタンをタッチするが、男児は指で画面を操作できないため、手の甲など体の動く部位を使って外付けスイッチに触れることでスマホに信号を送って使用。男児は自らチャンネルを変えて好きなアニメを見れるようになった。

 ところがある日、スイッチを触れても反応しなくなってしまった。

 松尾さんによると、福祉機器の市場は狭く、専用のアダプターがほとんど出回っていないため、複数の既製品をつなげなければいけない。男児の場合もスイッチから送った信号をスマホに送れるように変換するアダプターを通した上で、スマホとスイッチへの電源の供給や信号のやり取りをする別のアダプターを通じてスマホを操作していた。

 原因はアダプターの動作不良だったが、複数の機器をつないでいるため最初は不具合が出た場所が分からず、母親は「どれが壊れたか全くわからず困った」と話す。

 そこで同社は専用アダプターの開発に乗り出した。スマホと電源コード、入力スイッチの接続を一つのアダプターに集約する仕様にした。更に故障の判別がしやすいように、通電していれば押すとランプが点灯する確認用のボタンも付けた。

 CFを募るサイトには発売を期待するコメントが100件以上寄せられている。松尾さんは「障害者がより使いやすいような商品をつくっていきたい」と意気込みを見せる。

 CFの目標額は350万円で、11月の発売を目指す。CFの詳細は(https://readyfor.jp/projects/iOS-Adapter)。【阿部絢美】

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