日向灘を震源に起きた8日の地震で、気象庁が初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表したことを受け、四国や近畿の自治体でも対応に追われた。
高知県では地震発生直後から、県庁3階の防災作戦室に職員約90人が集まり、慌ただしく情報収集に追われた。午後8時から災害対策本部会議を開き、浜田省司知事が「出されたのは臨時情報の『警戒』ではなく、一つ下の『注意』」だと強調。県民に対し「今後1週間程度、通常の日常生活を送りながら、備蓄や避難経路などを改めて見直してほしい」と呼び掛けた。
会議後、10日から本番を迎える「よさこい祭り」の開催可否を記者団から問われ、「主催者が判断することだが、いたずらに萎縮して全てをやめてしまうという段階ではないと思う」と述べた。
南海トラフ地震で最大34メートルの津波が想定されている同県土佐清水市では、危機管理課の職員が待機して気象庁で開かれた評価検討会の結果を待った。午後7時すぎに「巨大地震注意」が発表されると、災害対策本部設置の検討に入った。本部では、情報収集や住民への周知などにあたるという。担当者は「危機感を持って素早く対応したい」と話した。
土佐清水市と同じ最大34メートルの津波が想定されている同県黒潮町では、高齢者等避難情報を町全域に発表、29カ所に避難所を開設した。情報防災課の担当者は「これまでも臨時情報が出た場合のために準備をしてきた。警戒の度合いを高めて、突発地震に備えたい」と語った。
徳島県は注意情報の発表を受けて記者会見。佐藤章仁・災害対策警戒本部副本部長が「県民のみなさんは普段通りの生活を続けて構わないが、巨大地震に備え、避難場所や経路の確認、家具の固定、持ち出し品の準備などに努めてほしい」と呼びかけた。初めての臨時情報に、防災担当者にも戸惑いの色が浮かぶ。佐藤副本部長は会見で、11日から始まる徳島市の阿波おどりについて「発令直後で検討していないが、主催者の判断になるのではないか」と明言を避けた。
同県美波町でも注意情報が出された直後に災害対策本部を設置。職員が次々と町役場に集まり、対応に追われた。防災無線を通じて住民に注意を呼びかけたという。
四国電力によると、四国唯一の原発である伊方原発(愛媛県伊方町)は現在、運転を継続している3号機が定期検査で停止中。担当者は「臨時情報が出た場合の対応方針に沿って対応していく。全社警戒態勢に入り、情報収集に努めている」と話した。
紀伊半島南西部の和歌山県田辺市では、日ごろの防災対策や避難場所などについて家族で再確認してもらうよう防災無線などを通じて注意を促した。危機管理課の担当者は「地震は継続して発生する可能性もあり、引き続き情報収集に当たりたい」と話した。
南海トラフ地震で最大17メートルの津波が予想されている本州最南端、同県串本町の前芝賢一郎さん(74)は、「とりあえず普段からまとめている防災グッズを点検したが、自然のことだからこれ以上注意のしようがない。しばらくは緊張しながらの生活を強いられそうだ」と話した。
大阪府は危機管理監をトップとする「防災・危機管理指令部」を設置し、二十数人体制で情報収集に当たった。防災対策を確認し、府民向けの情報提供を検討した。
8日の地震では、大阪市内でも震度1を観測。府危機管理室によると、湾岸部にある府咲洲(さきしま)庁舎(大阪市住之江区)のエレベーターが一時停止するなどの影響は出たが、人的被害は確認されていない。
大阪市北区から帰宅途中だった大阪府富田林市の団体職員の男性(47)は「職場で揺れを感じたが、臨時情報が出たことは知らなかった。週末は和歌山に行く予定だが、大丈夫だろうか。数日分の食料は備蓄しているが、『注意』と言われても、具体的にどうしたらいいのか分からない。避難場所を確認するくらいしか思いつかない」と戸惑った。
堺市北区の女性会社員(52)は「地震が起きたことに気付かず、臨時情報の存在も知らなかった。テレビを見て情報収集し、対策を考えたい」と話した。【小林理、井上英介、松田学、中田敦子、砂押健太、高木香奈、古川幸奈、戸田紗友莉】
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