漁業者も釣り人も気持ち良く…。静岡県西伊豆町で、アプリを使って漁港を釣り場として開放する取り組みが行われています。
メジナにカサゴ。様々な魚と出会うことができるのが漁港での釣りの魅力です。しかし、そこにはある問題が…。
伊豆漁協 田子支所 真野創さん
「漁業者の船が通ってプロペラに釣り糸が巻いちゃって、リールと竿が海の方に持ってかれて。『弁償してくれないか?』と。苦渋の決断で釣り禁止に」
近年、コロナ禍のレジャーとして釣りの人気が上昇。釣り人の増加に伴い、各地の漁港では漁業関係者とのトラブルが多発するなど、問題が発生しています。
静岡県西伊豆町の田子漁港でも、コロナ禍以降、釣り禁止の措置を取っていました。そして全国でも、同様に釣りを禁止にする漁港が増えているといいます。そんな状況を変えるために動き出した企業がありました。
ウミゴー 代表取締役 國村大喜さん
「初めは単に(釣り禁止が)悲しかっただけ。自分がこんな事やる予定は全くなかった。誰か何とかしてほしいって言っても誰も何とかしないなと思って」
自身も釣り人である株式会社ウミゴーの國村さんは、漁港での釣りの問題点を指摘します。
國村さん
「漁港って漁師さんたちが組合費などの費用を払って皆で維持している場所。そこに対してこれまで釣り人ってただ乗りをしていたというか。ただ乗りして汚して帰るんだったら誰も許してくれないよねっていうところが、日本中の漁港が釣り禁止になっていった根本原因」
そこで、國村さんはあるサービスを立ち上げます。それが「海釣りGO」。
漁港を釣り場として整備し、利用者は専用アプリを使って釣り場を予約してから釣りをします。その際、利用料を徴収し、その一部を漁港に分配することで、漁港側のメリットも生み出します。
田子漁港は去年7月、町や漁協のサポートの下、全国で初めて「海釣りGO」を導入し、港を釣り場として開放しました。
漁港を統括する真野さんは開放当時のことをこう振り返ります。
真野さん
「釣り禁止というのが皆さんに周知できたところに新たに(海釣りGOを)始めて、また元の木阿弥になっちゃうんじゃないかって、多々そういう話がありまして、最初の2、3ケ月は(漁業者の)理解とか大変でした」
料金は大人1時間300円。駐車場が1時間100円。巡視員が定期的に見回りや清掃をするので、利用者は安心して釣りができます。サービス開始当初から話題を呼び、利用者は現在までに4700人を超えています。
田子漁港の関係者や地元住民の評判も上々です。
真野さん
「今までは(釣り人に)声を掛けられなかった雰囲気だったけど、お互いが声掛け合えるような、そんな世界になった。いつも来るリピーターの方が写真を送っていただいて、うちの方で(外に)貼り出したりして。これはいついつ田子漁港で釣れましたよっていう周知をして、地元の方も『こんなのが釣れるんだ!』って喜んで」
「海釣りGO」の導入で、漁港側も利用者側も納得した形で釣り場として開放することに成功した田子漁港。
そして新たに8月から、静岡県西伊豆町の仁科漁港でも「海釣りGO」を導入することが決まりました。
伊豆漁港 仁科支所 山田雅志さん
「隣の田子が海釣りGOを始めて少し利益が出たと。飲食店のお客さんが増えたとか、そういうこと聞いたもんで。じゃあうち(仁科漁港)もやってみたいなと」
釣り以外にも漁協直営の食堂や市場・露天風呂など、家族連れで楽しめる魅力がたくさんあるという仁科漁港。
山田さんは過疎が進む地域の活性化にも期待をしています。
山田さん
「宿泊施設・飲食店、そういうところは港がにぎやかになればそこもにぎやかになると思うので、過疎化とか人口も少なくなっているところに人が入ってきてくれれば良いかなと思います」
開かれた漁港で「持続可能な『いい釣り』を」。國村さんは海釣りGOを全国に展開していきたいと語ります。
國村さん
「かつて本当に魚が山ほど取れて日本自体も景気が良かった時代って、漁港って本当ににぎわっていた。そういう世界に一歩でも近付けたいと私たちは思っていて、多分それは色んな地域課題に悩んでらっしゃる日本の沿岸部の漁村・町の方々もきっと同じ思いだと思うんですよね。なので一つ取っ掛かりは釣り場開放、そのきっかけを起点として例えば漁業体験であったり、水産業の加工であったり、地元の方が気付いていないような良いところをピックアップして、その費用をまた地元に還元させるっていう大きなループみたいなものを色んなところで作っていきたい」
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