広島で被爆し亡くなった園井恵子の人生を歌にしたCD「ふるさと 永遠に」=2024年8月、岸桂子撮影
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 79年前の1945年8月、移動演劇公演のため滞在した広島で被爆し亡くなった岩手県出身の元タカラジェンヌ、園井恵子を語り継ぐ歌「ふるさと 永遠(とわ)に」が完成し、CD化された。作曲したのは宝塚歌劇団の作曲家として数々の名曲を手がけてきた吉崎憲治さん(90)=兵庫県宝塚市。園井の短き人生に思いを寄せ、8月6日の朝は激しい曲調で表現した。

 園井は30~42年、歌劇団に在籍。男役を中心に娘役から脇役まで幅広くこなし、退団後は阪東妻三郎主演の映画「無法松の一生」のヒロイン役でも注目された。45年8月6日、移動演劇「桜隊」の一員として訪れていた広島で被爆。15日後、身を寄せた神戸市の知人宅で32歳で亡くなった。出身の岩手県岩手町に96年、ブロンズ像が建立され、2019年には「宝塚歌劇の殿堂」に加わった。

 吉崎さんに作曲を依頼したのは、同町で園井の顕彰活動を続ける「園井恵子を語り継ぐ会」の柴田和子会長(76)。23年の生誕110年を前に「歌にすれば、多くの方の耳に残っていくのでは」と考え、自ら作詞した。吉崎さんは「長く歌劇団で仕事をしてきたが、園井さんのことは生誕100年式典で岩手町を訪れるまで知らなかった。もっと知られるべき人だと思って引き受けた」と話す。

 歌は5番構成。同町ふるさと大使のボーカリスト、柴田泰孝さんが伸びのある歌声で園井の人生をたどる。序盤は優雅なメロディーで岩手や宝塚などのふるさとへの愛を浮かび上がらせるが、4番だけガラッと変調する。<折れたひまわり手を差しのべて/水・水・水と命の叫び/今も忘れじ 今も忘れじ>といった歌詞は柴田さんと吉崎さんの共作だ。

園井恵子さんをしのぶ「ふるさと 永遠に」を作曲した吉崎憲治さん=兵庫県宝塚市で2024年7月18日午後3時17分、岸桂子撮影
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 「戦争では全てがなくなってしまう。そんな苦しみに思いをはせながらつくった」と吉崎さんは静かに語り、こう続けた。「私も住んでいた徳島で空襲に遭い、死んでもおかしくなかった。この年になって戦時中のことは忘れかけているし、思い出したくもないが、誰かが意識して語り継いでいかねばと感じています」

 柴田さんは「園井さんだけでなく、夢を持って活躍している若者が戦争で命を落としてしまった。平和がいかに大切かをこの歌を通して次世代に伝えていきたい」と話す。

 CDは1枚2000円。申し込み・問い合わせは販売委託先「ひょうえもん」へメール(hyoemon515@if-n.ne.jp)。【岸桂子】

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