断種手術を受けさせられたことを明かし、「どうか勇気を持って」と被害者らに呼びかける大山勲さん(右)=名古屋市中区大井町で2024年7月31日午後7時11分、荒川基従撮影

 障害者らへの不妊手術の強制を可能にした旧優生保護法は憲法違反との最高裁判決を受け、名古屋市中区で7月31日に開かれた学習会で、聴覚障害があるため断種手術を受けさせられた愛知県豊明市の大山勲さん(84)が、差別や被害の実態を語った。断種手術の前に妻が二度、人工中絶手術を受けさせられたことなどを明かし、「悔しくて、悔しくて。もし子どもがいたら、もっと楽しかったと思う」と告白。名乗り出られないでいる被害者らに「どうか勇気を持って」と闘いに加わるよう呼びかけた。

 学習会は「優生保護法裁判愛知原告を支援する会」が開いた。弁護団による判決解説の後、大山さんは、名古屋地裁が旧法は違憲とした訴訟の原告である尾上敬子さん(74)、一孝さん(77)夫妻と共に登壇した。

 大山さんの妻も聴覚障害があり、妊娠すると親族に連れられて中絶手術を受けさせられ、再び妊娠するとまた手術を受けさせられたという。「頭にきた。悔しくて、悔しくて」。その後、勤務先の会社の経営者家族から「中絶手術が大変だから、あなたも手術したら」と言われ、断種手術を受けさせられた。「抵抗できなかった。苦しむ妻の姿を見てきたので、自分が手術すれば終わると思った」と振り返った。

 手術後、大山さんは会社を辞めた。周囲から「子どもを作ったらいいのに」と言われると、手術のことを明かせず笑ってごまかしてきたという。「苦しかった。すごく恨んだ。もし子どもがいたら、いろんなことを手伝ってくれたと思う。いろんなことを祝ったり、もっと楽しかったと思う。毎日がさみしい」と話した。

 尾上夫妻が実名で闘う姿を見て、自分も実名で被害を訴えようと決断したという大山さん。「どうか勇気を持って私たちに加わってほしい。遠慮なく相談してください」と名乗り出られないでいる被害者らに呼びかけた。

 愛知県によると、県内では255人に強制不妊手術が行われ、残された資料から氏名が判明しているのは60人だけだ。このほか、「本人や配偶者の同意があった」として行われた手術が440件あったが、「支援する会」は「本人の自由な意思ではない場合がほとんどと推測される」としている。【荒川基従】

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