視力低下を防ぐため、外で遊ぶよう呼び掛ける文部科学省作成のリーフレット。熱中症対策にも言及している

 文部科学省は31日、2021~23年度に小中学生の視力の実態を調べた調査結果を公表した。遠くが見えにくくなる近視が小学校低学年ほど進む傾向があるとし、視力低下を防ぐためできるだけ外で遊ぶよう呼び掛けているが、保護者からは「連日暑い。外で遊ばせるのは難しい」との声も漏れる。

 調査は視力低下の実態把握を目的に初めて実施。9都道府県の小中学生約9000人を抽出して視力を調べたほか、外で遊ぶ習慣なども聞き取った。このうち約5200人には3年間の追跡調査を実施した。

 裸眼視力が0・3未満なのは小学1年で1%台だったが、年齢に比例して増え、中学3年では約3割に上った。学年ごとの追跡調査では、小学1年生約730人を追跡すると、近視に該当する人数が21年度は91人だったが、3年生になった23年度は264人と3倍近くに増え、各学年で最も増加率が高かった。

 屋外活動と視力との関連も調べ、外でよく遊ぶ子の方が視力低下が抑制されていることを示唆するデータもあった。スマートフォンや携帯型ゲーム機の利用頻度と視力低下との関連は明らかにならなかった。

 文科省は「屋外での活動が推奨されることが示された」とし、休み時間は積極的に屋外で過ごし、休日には2時間以上屋外で過ごすよう呼び掛けている。熱中症対策も必要だとして、木陰や建物の影で過ごすことも考えられるとしている。

 こうした呼び掛けに対し、小学1年の長女がいる東京都内の40代保護者は「夏は木陰でぼんやり過ごせということだろうか。最近は木陰も十分暑いが……」と困惑した様子。都内のある小学校に併設された学童保育の担当者は「視力のことを考えれば外遊びはできるだけ取り入れたいが、そればかりを考えて活動を決めるわけにもいかない」と話した。

 文科省の担当者は「無理に屋外に出る時間を確保するよう強く求めるものではないが、屋外活動と視力との関連に意識を向けてもらいたい」としている。【斎藤文太郎】

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