パブリックビューイング会場で「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録を喜ぶ来場者ら=新潟県佐渡市のきらりうむ佐渡で2024年7月27日午後1時56分、中津川甫撮影

 世界の宝に――。新潟県の「佐渡島(さ ど)の金山」が、世界文化遺産に登録されることになった。国内暫定リストに記載された2010年から14年の歳月を要した悲願の登録に、金山がある佐渡市の関係者らは喜びと期待に沸いた。

 佐渡市の「きらりうむ佐渡」であったパブリックビューイング(PV)では、関係者や市民ら約200人が固唾(かたず)をのんで審議の様子を見守った。登録が決まるとスティックバルーンをたたき、大きな歓声が上がった。

 30年近く活動を続けてきた市民団体「佐渡を世界遺産にする会」の中野洸会長(83)はPV会場で一報を聞き、「佐渡金山が世界の宝として認知された。金山を守り、活用することでこの島が豊かになっていくよう頑張っていきたい」とあいさつ。石見銀山(島根県)で世界遺産登録への調査が始まったことに刺激を受け、1990年代から金山に関する独自調査を行い、県議だった頃には超党派の議員連盟をつくるなど尽力してきた。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会の諮問機関が6月、韓国の主張などを念頭に、「登録」ではなく追加情報の提出を求める「情報照会」と勧告しただけに気がかりだったという。中野会長は「韓国も最終的には認めてくれた。いかに仲良くやっていくか、我々の責務だと思っている。(韓国が求めた)条件があるなら、民間としてできることを協力したい」と話し、今後を見据えた。

 また新潟県の花角英世知事はPV会場に向けてオンラインを通じてあいさつし、「長年の県民の願いが実現する瞬間を迎えられた喜びを多くの皆さんと共有したい」と満面の笑みで語った。そして「(佐渡金山を)次の世代に引き継ぐとともに、多くの方々に佐渡に来てもらい、世界遺産としての価値を理解してもらいたいと願っている」と話した。

 佐渡市は、世界遺産に登録されれば佐渡を訪れる24年の観光客数は前年比で1・2倍の約50万人になると試算している。観光客は91年をピークに減少傾向なだけに、市や観光業者ら関係者の期待は大きい。

 佐渡金山の江戸時代の坑道などを公開する観光施設「史跡佐渡金山」を運営する「ゴールデン佐渡」の鈴木徹社長(62)は「世界遺産登録は光栄なこと。国内外から多くの観光客に来てほしい。前年度比で1割程度の増加を期待している」と力を込めた。一方で「観光客の増加により車の渋滞や駐車場の不足、入場の受付で行列ができる可能性がある」と課題にも言及。佐渡市などと協力しながら対処していく考えを示した。【中津川甫】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。