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 今年6月に日本リカバリー協会が発表したある調査結果が話題になっている。それは「日本人の8割が疲れている」というもの。「疲れている(高頻度)」が44.2%、「疲れている(低頻度)」が37.5%で、合わせて80%超が「疲れている」状態で、「元気な人」はわずか18.2%という数字だった。そもそも「疲れ」には体を動かすことで溜まる肉体的疲労と、ストレスなどが原因とされる精神的疲労に分けられるが、一般的には精神的疲労の方が慢性化しやすく、その要因の一つには現代人の生活とは切り離せないスマホの存在も。『ABEMA Prime』では、脳の疲労を数値で可視化できるアプリを開発した医師とともに、現代の「疲労」について考えた。

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■脳の疲れが可視化されたアプリが誕生

 「疲れ」という曖昧なものを、スマホで誰でも見られるように数値化しようと開発されたアプリが「ヒロミル」だ。開発者で日本疲労学会理事・倉恒弘彦医師は、改めて「疲れ」の定義について「心や体の活動が低下している状態を『疲れ』と呼んでいる。その認識する感覚が疲労感。体の疲れは筋肉の疲労、心の疲れは脳疲労と呼ばれる。筋肉が疲労すれば脱力や痛みなどの症状が感じられ、脳の疲れであれば思考力や集中力の低下、これが進むと意識の低下が現れる」とした。

 これまで、疲れに関する研究は問診票などを用いて、自覚的な症状調査が主だったという。「これだと科学的に様々な指標との関連性を見ることができなかったので、疲れを客観的な指標で見ようという研究が2000年から始まった。疲れを客観的に見る方法が活動量。誰もが疲れてくると動きが悪くなる。その他にもホルモンバランスが崩れる、免疫力が低下するなど、いろいろな指標が見つかった」中で、最も簡便かつ安価で繰り返し検査ができるものが自律神経系だった。

 アプリでは「指先の血液の流れを見ることによって、心拍の間隔を見ている。これを周波数分析しているが、心臓というのは交感神経系が興奮すれば心拍数が早くなり、リラックスして副交感神経系が高まればゆっくりになる。この2つの指標をチェックできるようにした」と、分析方法を紹介した。

■限界を迎えた疲労を達成感による脳内物質が隠す「疲労感なき疲労」

 疲れを可視化することで最も重要といえるのが「疲労感なき疲労」を見つけ出すことだ。疲れが招く最悪なケースの一つが過労死。日々の重労働を自覚しながら、耐えられないものを耐えようとして招くケースもあれば、肉体的・精神的に疲労しているはずなのに、これを自覚することができないまま生活を続けてしまうケースもある。倉恒氏は、これらを「クラッシュ」と表現する。「疲労感を自覚することができない状況で働きすぎると、最終的に体のクラッシュが起きて、脳血管障害や心筋梗塞で倒れてしまう。こういう状況を早く客観的指標で見つけ出すことが必要だ。誰もが忙しく働いていると、疲れを自分では認識していても休めない状況がある。その時に客観的指導で『あなたの疲れはかなり進んでいるから、そろそろ休憩が必要ですよ』と紹介し、それを会社に見せることによって、休養を取るべきだと活用される」と、活用事例を述べた。

 疲労感がないまま疲労が続いてしまう状況はなぜ起こるのか。原因は、脳内物質によるものだという。「仕事が忙しい状況などは疲れを感じるのが当たり前。体の細胞レベルと組織レベルでは傷ついている。タンパク質の傷、遺伝子の傷がつけば、それを修復するために休養が必要」だが、仕事に対して充実感を持っている時ほど、この疲労感を包みこんでしまうことが起こる。「たとえば周りの人から『あなたが頑張ってくれているから仕事がうまくいっている』など言葉をもらってしまうと、アドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンという疲労感をマスクするような脳神経伝達物質が出る。本来、体のアラーム信号は鳴っていたのにマスキングされてしまって、疲労を自覚できなくなる」というのが正体だ。

■回復には睡眠が最高の方法 休養にも「積極的」「消極的」の2パターン

 では疲労から回復するにはどうすればいいか。倉恒氏は睡眠の重要性を説く。「家でのんびりしようと思っても、交感神経の過緊張が続いていると、睡眠の質が悪くなる。翌朝起きた時に『今日も元気だ。一日頑張ろう』という意欲が出れば健康的だが、朝起きた時から疲れが取れない状況になっていることも多い。脳の疲労にも急性疲労と慢性疲労がある。急性疲労は脳の情報処理が追いつかないほど忙しい状態。一方、睡眠時間が確保できないような状況が続いてくると、それほど忙しい状態が続いていなくても脳をリセットできない状態がずっと続く」。また睡眠前の使用について問題視されることも多いスマホについては「睡眠の障害がない、疲れもそれほど感じてないという人はスマホと付き合って問題ないが、なかなか入眠するのが難しいとか睡眠時間が確保できない場合は、寝る1時間前にはもうスマホは使わないようにと言っている」と補足した。

 なお、疲労からの回復方法には大きく2パターンあり、積極的休養(適度に体を動かすことにより疲労回復を早める主体的に身体を動かす攻めの休養)と、消極的休養(活動を一旦停止させて体を動かさずエネルギー消費を抑制して回復するのを待つ体を動かさない休み方)。運動などでリフレッシュするのは前者、睡眠は後者にあたるという。
(『ABEMA Prime』より)

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