阪神大震災後の解体現場の写真を示しながら記者会見するNPOひょうご労働安全衛生センターの西山和宏事務局長(中央)ら=神戸市中央区で2024年7月22日午前10時19分、山本真也撮影

 阪神大震災(1995年1月)で復旧作業に従事し、27年後にアスベスト(石綿)関連疾病の悪性胸膜中皮腫を発症した兵庫県内の男性(67)に対し、神戸西労働基準監督署が労災認定していたことが22日、明らかになった。支援団体のNPO法人「ひょうご労働安全衛生センター」(神戸市)が発表した。

 センターによると、震災の復旧作業にあたった建設作業員や警察官が中皮腫などを発症し、労災や公務災害に認定されたのは、男性で6人目。

 記者会見でセンターの西山和宏事務局長は「この10年ほど新たな発症の情報がなく、もう出ないかとも思っていた。石綿関連疾病の発症は吸引から平均30~40年とされ、震災30年以降に被害が本格化する可能性がある」と危機感を示した。

 男性は震災当時、道路建設会社の神戸営業所長で97年1月までの2年間、神戸市内でがれき処理や建物の解体に携わった。工場や倉庫の壁の取り壊し現場では粉じんが舞う中、密閉状態で作業。男性は「被災地は復旧・復興が最優先され、石綿の危険性の認識はほとんどなかった。マスクも完全なものではなかった」と証言しているという。

 2022年2月、声のかすれなどの症状があり受診。同4月、悪性胸膜中皮腫と診断された。労基署は震災の復旧作業が石綿吸引の原因になったとして23年10月、労災を認めた。男性は胸の手術を受けた後、通院治療中。センターを通じ「解体現場は断水で水が使えず、大量の粉じんが舞う最悪の環境だった。同じ環境で働いていた同僚が心配です」とのコメントを出した。【山本真也】

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