放たれたのは、1羽の鷹(たか)。行われていたのは、鷹匠(たかじょう)による“迷惑鳥”の撃退作戦。全国各地で続発する鳥の被害。凶暴化するカラスや1000羽ものムクドリを鷹が一体どう撃退するのでしょうか?その秘策とは?
■2羽の連携プレー 粘り強く攻撃
この日の現場は、滋賀県の住宅街にある神社。
フンで真っ白 この記事の写真 取材スタッフ「サギのいる木の下はフンで真っ白ですね。かなりひどいです」 滋賀・草津市役所
環境政策課
井上賢亮さん
「集団で巣を作ってフンをして。フン害と臭いの対策はないか」 100羽を超えるサギ
この神社を荒らしていたのは100羽を超えるサギです。
白いコサギ大きなアオサギと白いコサギがコロニーと呼ばれる集団で巣を作っていました。
12年目のベテラン田中和博さん 鷹の舞ちゃん今回の撃退には2人の鷹匠が対応します。12年目のベテラン田中和博さん(52)と鷹の舞ちゃん(1)。
三輪優奈さん 露(つゆ)ちゃんそして6年目の女性鷹匠、三輪優奈さん(23)と露(つゆ)ちゃん(4)コンビが参戦。
「鷹と心を通わせたい」と鷹匠になった三輪さん。狙った鳥を確実に追い詰めるすご腕鷹匠です。サギが巣を作っている木へ向かいます。
下から巣に近づき攻撃まずは、三輪さんの鷹・露ちゃんがいったん下の枝に止まり、次第に巣に近づき攻撃!
簡単には逃げずしかし、サギも必死に抵抗します。実はこの時期、巣にはヒナがいるため、サギも簡単には逃げません。
舞ちゃんが上から攻撃そこで、田中さんの鷹、怖いもの知らずの舞ちゃんが加わる2段階攻撃へ。田中さんは舞ちゃんの表情を見極めGOサインを出し、上からの攻撃。
舞ちゃんと露ちゃんの連携プレー舞ちゃんは上から、一方露ちゃんは下から攻める連携プレー。粘り強く攻撃を続け、次第に巣から離れるサギもいました。
巣から離れるサギも 田中さん「かなり嫌がってるのは嫌がってるんで、追い払っていくと減っては行くので、ちょっとずつ減らしていく」
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■“相棒”と寝食を共に…信頼関係を築く■“相棒”と寝食を共に…信頼関係を築く
駅前を埋め尽くすムクドリ埼玉では大量のムクドリが発生。各地で頻発する害鳥による被害、自治体なども様々な対策を講じていますが…。
通行人「異様な感じがする。電話してても声が聞こえない」
「(上から)フンでやられてそれから通らなくなった」 「天空の王者」鷹
最高時速はおよそ70キロ。上昇気流に乗れば上空1000メートル以上で飛ぶこともできる「天空の王者」鷹。
田中さんの会社には、3000件を超える依頼が江戸時代に栄えた鷹狩から続く、日本の文化の一つ鷹匠。現在「天敵・鷹を使った害鳥対策」としても注目され、田中さんの会社には学校など、年間のべ3000件を超える依頼があります。
田中さん「北海道から沖縄までは行ってます」
田中さんは自宅の一室を鷹のために使っています。
田中さん「ハリスホークという鷹」
「(Q.羽を広げるとどのくらい?)1メートルぐらい。羽を広げると」 舞ちゃんと寝食を共にする田中さん
「人鷹(じんよう)一体」の田中さん。舞ちゃんとは寝食を共にし、相棒との信頼関係を日々築いています。
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■リゾートホテルに大量カラス■リゾートホテルに大量カラス
人を襲うカラス「黒いギャング」カラス。繁殖期を迎えたこの時期は凶暴になり、人を全く恐れません。一瞬でも隙を見せれば、テントの中にも入り込み餌(えさ)を探し回ります。
特に6月から7月にかけヒナが巣立つ時期は、警戒感が強まり直接人を襲うこともあります。
鷹匠のもとにもこの時期「カラスを追い払ってほしい」とSOSが急増。この日、向かったのは沖縄県石垣島。
田中さん「ちょっと手ごわい。沖縄特有の個性がある」 次々とカラスが現れる
田中さんが撃退の依頼を受け、何度も足を運んでいるのが「ANAインターコンチネンタル石垣リゾート」。施設内を歩き始めると、次々とカラスが現れます。
田中さん「半年前に来たんですけど、半年前でも覚えてる」 田中さんを「危険な人間」として覚えている 取材スタッフ
「10羽ほどのカラスが出てきました。田中さんが近づくと出てきました」
急に、ざわつき始めるカラスたち。賢いカラスは鷹匠の田中さんを「危険な人間」として覚えているというのです。カラスは一体ホテル内でどのような迷惑行為を?
ANAインターコンチネンタル石垣リゾート北峰一義さん
「ひどい時にはお客さんが座っているところに乗り込んでいく」
「頻繁に起きている」 テラス席で…
特に狙われるのがテラス席。その映像を見ると、飛んできたカラスが食べ残しを発見。器用にくわえてあっという間に飛び去ります。
食べ残しのスナックを奪うさらにプールサイドでも食べ残しのスナックを奪っていきました。
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■集団カラスに「ヒット&アウェー戦法」■集団カラスに「ヒット&アウェー戦法」
ホテルでは2年前から田中さんにカラスの撃退を依頼。さらに、ホテルにも鷹匠が?
従業員「(Q.普段は?)普段は料飲部の責任者をしています」
「ビーチとかプールの監視をしています」 ホテルのスタッフを鷹匠に
なんとホテルのスタッフを鷹匠として、田中さんが半年間指導。
ホテル内で飼育している鷹1羽の鷹をホテル内で飼育しています。早速、相棒の舞ちゃんとホテル内を見回ります。しかし、鷹を警戒してか、カラスは近づいてきません。
周辺の林がカラスのねぐらそこで、向かったのがホテル近くの林。実は、周辺の林がカラスのねぐら。今回はそこを、直接攻撃することに。
住処に寄って来たとあってか、カラスが鳴き声をあげ、近づいてきます。しかも中には、田中さんの頭すれすれでカラスが来ました。
反撃するカラスの集団凶暴な沖縄のカラスとの闘いがついに始まります。舞ちゃんの攻撃にカラスはいったん逃げますが、なんと、周囲のカラスも加わりすぐに集団での反撃。
田中さんは舞ちゃんを呼び戻し、いったん落ち着かせ作戦を変更。
カラスも次第に後退…“攻めては引く”を繰り返す「ヒット&アウェー戦法」に。何度も追い払いを続ける舞ちゃん。すると、カラスも次第に後退、林の中へ。ここは天敵・鷹のテリトリーだとカラスに認識させるのです。
田中さん「ここまで来るなよという追い払いはできたかな」
毎日鷹を飛ばすことで、ホテルでのカラス被害は確実に減っているといいます。
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■日没前までに決着を…■日没前までに決着を…
この日の依頼は四国の愛媛から。相手の鳥は1000羽もの大群だといいます。
田中さん「大きな施設に、害鳥の群れになっている」 愛媛県武道館
そこは「愛媛県武道館」。スポーツ大会などが行われる施設ですが、鳥のフンが積み重なっている状態です。
鳥のフンが積み重なっている 愛媛県武道館久保裕平さん
「突然ひどくなった。毎週高圧洗浄機で清掃してるけど、それでも…」
大きなイベントを控え、急きょ鷹匠に撃退を依頼。その鳥の正体がムクドリです。
ムクドリ 田中さん「今の時間だと10〜20羽しかいない。夕方になると大群で来ます」 夜になるといくつもの群れが…
建物の柱がムクドリのねぐらとなり、夜になるといくつもの群れが戻ってくるといいます。撃退作戦はムクドリがねぐらに集まり始める、午後6時すぎから開始。鷹は夜飛べないため日没前までに決着をつけたいと言います。
ねぐらに戻ってくるムクドリの群れ次々とねぐらに戻ってくるムクドリの群れ。そして、いよいよ舞ちゃんの出番。
増え続ける群れしかし、ねぐらに戻ってくるムクドリの群れは後を絶たず、増え続けます。この日は風がなく舞ちゃんは上昇気流に乗れず、建物の屋根まで中々上がれません。そのため、ねぐらまで近づけずムクドリを追い払えずにいました。
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■「ほぼゼロ」に! 警戒続く■「ほぼゼロ」に! 警戒続く
増えるムクドリ、鳴き声もさらに大きく、午後7時を回り辺りも暗くなり始めました。飛ばせる時間はあと15分ほどです。そこで、新たな作戦を立てました!
柱を伝い、上へと追い詰める 田中さん「そっから上がっていけ」
柱を伝い、上へ上へと追い詰めることに。田中さんの合図により徐々に登る舞ちゃん。そして、舞ちゃんはさらに上へ。
逃げるムクドリたち 取材スタッフ「ムクドリたちが鷹を見て逃げています」 追い詰められ、慌てる
追い詰められ慌てる1000羽のムクドリ。最後の攻撃から15分、迷惑なムクドリの撃退に見事成功。
撃退に見事成功 田中さん「いない、鳴き声が聞こえない。ほぼゼロになってしまいました。上まで上がってくれたんで、よかったです」
再び戻って来ないよう、これからも鷹匠の警戒は続きます。
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