東日本大震災の犠牲者を追悼するため国と県が復興祈念公園を整備するのに伴い、福島県双葉町の中野共同墓地で16日、「墓じまい」の供養式が行われた。県は津波で流されて所有者が不明の墓石や石仏を廃棄処分し、跡地を盛り土して芝生の多目的広場を造る計画で、17日にも墓石の撤去を始める。
供養式には県、工事業者、行政区の役員ら約20人が参列。住民の多くが檀家(だんか)だった大熊町の遍照寺の住職が、地面に並べられた墓石や石仏の前で読経した。大量の墓石を覆い尽くしていた雑草は、数日前に業者が刈り払った。
震災前の共同墓地は約30世帯が利用していたが、津波で壊滅。東京電力福島第1原発事故で2020年春まで避難指示が続いた。解除前のがれき撤去の過程で周辺に散らばった墓石や石仏が墓地の隣に並べられ、引き取られなかった423点が放置されていた。家名が入った墓石も一部残る。
供養式に参列した地元の浜野行政区長、高倉伊助さん(68)は「最後にきちんと供養ができホッとした。先祖たちも天高くからこの地を見下ろしてくれるかな」と話した。近くには地元の住民らで21年に再建した中野八幡神社があり、復興祈念公園敷地内で唯一再建された神社として残る。氏子総代として再建を進めた際、年配の住民たちから「何もなくなれば、(避難先から故郷に)行く理由がなくなってしまう。手を合わせる場ができてよかった」と言われたという。
県の相双建設事務所の担当者は、墓石の処分について「23年度に遺失物として届けたり、町の広報で呼びかけたりしても所有者が現れなかった墓石については、年度末に行政区長へ供養したうえで処分する旨を伝え、了解を得ている」と説明した。
国と県が双葉・浪江両町で整備する復興祈念公園は26年春に完成する予定。【尾崎修二】
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