都営地下鉄・神保町駅構内のエスカレーター脇に設置された「アイカサ」のスポット=東京都千代田区で2024年7月12日午後1時14分、千脇康平撮影
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 雨傘を共有するサービスが、急速に拡大している。スタートアップが手がけるシェア傘「アイカサ」は、6月の利用回数が過去最多を更新。運営会社は今後も設置場所を増やしていく方針で、「生活動線の全てをカバーしたい」としている。

アプリ登録者60万人超

 「アイカサ」は、鉄道駅や商業施設、コンビニなどに設けたスポット(傘立て)から専用のスマートフォンアプリで傘を借りられるサービスだ。1本140円(24時間)と、月額280円で同時に2本までレンタルできるプランのほか、社員の福利厚生として導入する企業も増えている。

 2018年12月、東京都渋谷区の約50スポットからスタート。首都圏のほか、愛知、大阪、福岡など14都道府県の計約1600スポットに拡大し、アプリ登録者は60万人を超えた。

 運営会社の「Nature Innovation Group」(東京都新宿区、丸川照司社長)によると、これまで利用回数が最も多かったのは22年7月。この年は関東甲信や西日本各地で観測史上最速となる6月の梅雨明けとなった一方で、翌月はぐずついた天気の日が多く、局地的な降雨が相次いだ。

 今年6月の利用回数が22年7月を上回ったことについて、マーケティング責任者の黒須健さん(31)は「例年より梅雨入りが遅かった都心では、急な降雨が多かった印象です。今日は大丈夫だと考えて、傘を持たずに外出した人が利用してくれたのではないでしょうか」と話す。

梅雨空の下、傘を差して歩く人たち=東京都千代田区で2024年7月12日午後1時半、千脇康平撮影
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シェアサービスの市場規模5倍超に

 多くの業界は、持続可能な社会の実現に向け、プラスチックごみの削減などの積極的な取り組みが求められるようになった。

 日本洋傘振興協議会によると、国内の洋傘の年間消費量は推計1億2000万~1億3000万本。安価で手ごろなことから、使い捨てされる「ビニール傘」が大半を占めるといわれる。シェア傘の利用増は、消費者の環境問題に対する意識の高まりも影響しているとみられる。

 乗用車や自転車、モバイルバッテリーなど広がりを見せているシェアサービス市場。一般社団法人「シェアリングエコノミー協会」と情報通信総合研究所の共同調査では、32年度の市場規模は最大15兆1165億円になるとし、10年間で5倍超の拡大を予測している。

 アイカサについて黒須さんは「ビルやマンションなどの不動産系との提携も強めてスポット数を10倍以上増やし、生活動線の全てをカバーしたい」としている。【千脇康平】

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