マルチ商法の拠点となっているカフェで、会員(左)と話す坂本新容疑者=東京都渋谷区で2023年9月、阿部絢美撮影(画像の一部を加工しています)

 業務禁止命令に従わずに連鎖販売取引(マルチ商法)の勧誘を繰り返したとして、警視庁生活経済課は11日、コンサルティング会社「President(プレジデント)」(東京都新宿区)の元代表取締役、坂本新(あらた)容疑者(30)=川崎市=ら男女4人を特定商取引法違反の疑いで逮捕したと発表した。

 マルチ商法を業務禁止命令違反で摘発するのは全国初という。

 警視庁によると、4人は複数の会社名で「ビジネススクール」を運営。「投資が学べる」と勧誘し、2019年10月~23年11月に全国の約2000人が会員になっていた。会員の平均年齢は21・7歳で、全体の約7割が、マッチングアプリで知り合った異性から入会を勧められていた。

 他に逮捕されたのは、いずれもプレジデントの関連会社で、「Monolith(モノリス)」(文京区)の代表取締役、大森航斗(かずと)(26)=墨田区▽「Pioneer(パイオニア)」(同)の代表取締役、奥寺大(ひろ)(28)=名古屋市▽「More(モア)」(新宿区)の代表取締役、森田帆南(ほなみ)(28)=渋谷区――の3容疑者。

 逮捕容疑は都の業務禁止命令期間中の23年4~6月ごろ、ビジネススクールの会員に、いずれも20代の延べ7人の男性を新規入会させるよう勧誘させてマルチ商法を続け、禁止命令に違反したなどとしている。警視庁は4人の認否を明らかにしていない。

 ビジネススクールでは、「1人紹介すれば10万円の報酬が得られる」「5人で元が取れる」と新規会員の勧誘を推奨していた。幹部クラスの会員が、勧誘に行き詰まった人に「マッチングアプリを使えば数を稼げる」と指示するケースもあったという。

 入会時には、会員登録費と情報商材タブレットの購入費として、42万9000~62万7000円を支払わせていた。会員から集めた総額約8億5000万円のうち、坂本容疑者に約5800万円、奥寺容疑者に約3000万円が渡り、2人は高層マンションの賃料や高級外車の購入費などに充てていたとみられる。

 ビジネススクールを巡っては、入会費用を用意できない人に消費者金融への借金を指示するなど、強引な勧誘が問題化。都は23年3月、坂本容疑者らプレジデントなど3社の代表者に、マルチ商法などの業務を9カ月間禁止するよう命令し、法人にも業務停止命令を出していた。

 警視庁はモノリスなどの幹部クラスの会員だった男女3人についても、12日にも特商法違反の疑いで書類送検する方針。【加藤昌平】

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