東京ディズニーシー(TDS、千葉県浦安市)で8番目となる新エリア「ファンタジースプリングス(FS)」が6月に開業した。開発責任者で、オリエンタルランド第8テーマポート開発準備室の鈴木学室長(47)に狙いやこだわりを聞いた。【石塚孝志】
――構想10年、ようやく開業しました。
◆ゲストの素晴らしい笑顔が我々にとってのご褒美。例えば「アナと雪の女王」、私たちが素晴らしいアトラクションをつくったと思ったとしても、ゲストがどう受け取ってくれるかはわかりません。実は出口に張り込んで、ゲストの表情を確認しています。笑顔や、時には感動して泣いた顔を見ると、「ヨッシャ!」という気持ちになります。
――新エリアはTDS開園以来、最大規模の開発となる14万平方メートルの拡張で約3200億円を投資しました。
◆約10年前から年間約3000万人のゲストを迎えるようになりました。それはよいことなのですが、より多くの人が楽しめる場所が必要になりました。TDSより東京ディズニーランド(TDL)の方が入場できる人数は多かったのですが、FSの開園でほぼ同規模になり、ゲストの選択肢も増え、リゾート全体としてバランスも良くなりました。
――開業まで大変だったことは。
◆やはりコロナ禍です。TDLもTDSも休園しました。今後どうなるか分からない中で、社内でもこのまま開発を続けていいのかという議論が正直ありました。でも、コロナ後に希望を与えることになると思ったので、開発を続けました。
――アトラクション「ラプンツェルのランタンフェスティバル」は、映画の幻想的な場面を実物のランタンを使って再現しました。
◆映画の世界に入り込み、実際に名シーンを体験していただくことが大切だと思っていて、映像では表現仕切れない部分があった。そのため、どのように見えるか、音もどのタイミングでゲストの耳に届くようにするか。ボートの動きもスピーカーの配置もこだわり抜いて設計しました。
――「アナと雪の女王」のアトラクションは丁寧に物語を追っています。
◆ボートに乗りながら、まるでミュージカルを見ているように、名曲や名シーンを見てもらうのが狙いです。映画の世界に入り込むにはキャラクターの動きが重要。それをかなえるのが(音と動き、電子制御の三つの要素を結合させた機械人形の)「オーディオ・アニマトロニクス」です。最新技術で、ほおの動きなど表情一つとってもきれいに表現できるようになりました。
――「ピーターパン」のアトラクションは3Dメガネ着用です。
◆ピーターパンと一緒に空を飛ぶという感覚を体験してもらいたかった。乗っている船が揺れたり、スピードが出る場面では前から風を受けたりという特殊効果による疑似体験を合わせてつくり上げました。ぜひ映画の世界の住人となって新エリアの中を散策してほしいですね。
すずき・がく
東京都大島町出身。大学卒業後、「人に喜びを与えられる仕事ができるかな」と思い、1999年に入社。主に施設の開発などを担当。2021年7月から現職。
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