防衛省は10日の自民党国防部会などの合同会議で、海上自衛隊の潜水艦修理に絡んで、川崎重工業が裏金を捻出して隊員を接待していた事実関係を認めた。海自隊員への利益供与などのため、川崎重工業が捻出した額が現時点で把握できている分だけで年2億円程度、総額十数億円に上ることを明らかにした。提供されたのは、商品券や飲食接待だけではなく、乗組員が要求した工具やゲーム機なども含まれていたという。
自民の小野寺五典安全保障調査会長が会議後、記者団に明らかにした。自衛隊と取引企業の悪質性の高い癒着に対して、国民から厳しい視線が向けられるのは必至だ。
裏金の捻出に当たっては、川崎重工業が複数の取引先を介した架空取引を繰り返していたことも発覚している。自衛隊側が自分たちへの利益誘導を主導したかどうかが今後の大きな焦点となりそうだ。
小野寺氏は会議の冒頭で「表面に出ている以外にもさらに深いものがあるのではないか。不祥事が相次いでいて、正直、一体何をやっているんだという強い思いだ」と発言。出席した松本尚防衛政務官は「数々の問題について心配と迷惑をおかけし、おわびしたい」と陳謝した。
防衛省は現在、裏金問題に関して実施している特別防衛監察も含めて「しっかり対応する」と表明したが、出席した自民議員からは「なぜ、このようなことが起きたのか」「一体、これだけの金額を何に使ったのか」などの批判が相次いだ。
政府が安全保障環境の厳しさを理由に5年間で計43兆円の防衛費を計上することを決めていることを踏まえ、「防衛装備を増やすということで納税者に負担をお願いしている中、このような不正は由々しき問題だ」との意見も出たという。
また防衛省は会議で、国の安全保障に関わる「特定秘密」の漏えいや省内でのパワハラ、海自隊員による潜水手当の不正受給があったことも認めた。詳細については「調査がまとまり次第、改めて報告する」と説明した。同省はこれらの不祥事をめぐる関係者の処分を12日にも発表する方針だ。【森口沙織】
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