能登半島地震の被災地からの帰還式に臨んだ山本洋介社長(手前列左端)ら=兵庫県養父市役所で、浜本年弘撮影

 能登半島地震の被災地・石川県珠洲市で稼働してきた移動式ランドリーが8日、兵庫県養父市内に帰還した。1月24日から6月24日までの半年間、珠洲市立の上戸小学校と宝立小中学校の2カ所に順次設置され、被災者ら延べ約5900人が利用した。【浜本年弘】

 コンテナ内に乾燥機能付き全自動洗濯機9台を備えたランドリーは、被災者支援のための備えとして2023年から養父市の山本運輸が所有。普段は市内の道の駅にコインランドリーとして設置している。今回の支援は、山本運輸と市が結んでいた災害時の協定に基づき、市が派遣し、無料で稼働した。

 養父市によると、珠洲市内は水道網が甚大な被害を受けたため、日ごろの衛生管理をはじめ、気持ちの切り替えなどに役立つ洗濯は欠かせないとして、需要に応じようと派遣。当初は陸上自衛隊が確保した風呂用の水を使う方法でしのいだ。

石川県珠洲市の移動式ランドリー利用者がつづった感謝の言葉=兵庫県養父市役所で、浜本年弘撮影

 半年間の前半は無休で、後半もほとんど休まず2カ所で計138日にわたり稼働。利用者の受け付けなどの運営業務では、当初から3月末までは養父市が職員46人を順次派遣した。4月以降の宝立小中では珠洲市シルバー人材センターのメンバーが担った。

 帰還式のあった養父市役所では、ランドリーを珠洲市へ運んだ山本運輸とメンテナンスに携わった業者の計7人を市職員約50人が出迎えた。山本運輸社長の山本洋介さん(48)も点検のため、断続的に珠洲市に9回滞在した。広瀬栄市長は「被災者同士が言葉を交わし合える場にもなったと思う。半年間、よく頑張っていただいた」とねぎらった。

 東日本大震災(11年)や熊本地震(16年)で支援物資を運び、さらに踏み込んだ支援を目指していた山本さんは「必要な時に必要な場所へ支援を届けることは達成できた。多くの被災者の方々と話ができたことを糧にしたい」と話した。

 珠洲市の利用者が、養父市民と山本運輸に宛てた感謝の言葉を記した付箋も掲示。「寒い早朝から大変お世話になりました。一生忘れません」「私たちみんなが困っている時に手を差し伸べてくださり、皆様のやさしい心の温かさは忘れません」とつづられていた。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。