日本の研究力低下に歯止めをかけようと、国内の学会連合有志は今月、国が支給する科学研究費助成事業(科研費)の倍増を求める署名活動を始めた。国から大学への交付金削減に伴い、科研費の獲得競争は激化しており、研究課題1件当たりの配分額が減少。円安や物価高も研究資金不足に追い打ちをかけていると訴えている。署名は年内いっぱい続ける。
8日現在、生物科学学会連合や日本化学連合など12の学会連合と167の学会が賛同しているという。所属会員数は延べ約208万人。署名活動と並行して、科研費の増額を求める要望書を今夏にも国に提出する予定で、集まった署名は今後の要望活動に生かす。
科研費は、研究者から応募のあった研究課題を専門審査会が審査し、採択されると配分される研究資金。2004年度の国立大の法人化以降、大学の基盤的経費となる運営費交付金の削減が続いているため、科研費を含む競争的資金への依存度が高まっている。
学会連合有志によると、科研費の予算(補正除く)は近年横ばいが続き、24年度は2377億円。一方、獲得競争の激化で応募数が増えた結果、研究課題1件当たりの配分額が減少した。物価高と円安を考慮すると、実質的な平均配分額はこの10年で半額になったという。学術誌への論文掲載料の高騰も研究活動を阻害している。
署名をとりまとめる生物科学学会連合代表の東原和成・東京大教授らは8日、東京都内で記者会見した。国際競争力の回復や人材育成などのため、科研費は現状の約2倍の4800億円規模が必要と試算した。東原教授は「私たちの研究教育現場では基礎研究と学生教育が難しい状況になっている」と賛同を呼びかけた。
署名は学会連合有志のホームページ(https://seikaren.org/kakenhi)経由で集めている。【鳥井真平】
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