那覇市おもろまちの日本銀行那覇支店では3日、20年ぶりにデザインの刷新された新紙幣が次々と輸送車に積み込まれ、県内金融機関に134億円分を引き渡した。同市東町の琉球銀行本店では一足早く新紙幣を手に入れようと、両替に訪れる人もいた。
午前8時ごろ、日銀那覇支店では金融機関への引き渡し作業が始まった。1束千枚ずつの各紙幣が10束1パックにまとめられ、三つのパレットに積まれた。作業員が破れや汚れなどの異常がないか、必要な金額が用意されているかどうかを確認した後、紙幣を次々とジュラルミンケースに詰め込み、各金融機関に輸送する2台の車両に搭載した。
20年前の新紙幣が発行された日、県警は輸送車の襲撃や紙幣の強奪を想定し、100人体制で警戒したが、今回は特別警戒はなかった。同店周辺ではおもろまち交番の警察官が警戒に当たり、大きな混乱はなく落ち着いた様子だった。県警によると午後5現在、県内でトラブルはない。
ただ、県外では新紙幣発行に関連した詐欺事件が発生している。県警は「新紙幣に変わっても、現在の紙幣は問題なく使えるのでだまされないで」と注意を呼びかけた。
琉銀本店では同日午前11時から両替対応を開始。初日は103人が訪れた。
20年前の新紙幣発行時も、初日に両替した大城小百合さん(53)=那覇市=は「手に入れるまで3カ所回り歩いた。ホログラムがきれいで前のお札よりも明るい感じ。友達に自慢したい」と笑顔を見せた。
一方、新紙幣導入に戸惑う声も。東町で飲食店を経営する40代男性は、新紙幣が出ると気づかずに両替。「店の券売機がまだ新紙幣に対応できていない。機械変更にも15万円かかり、痛手だ」と声を落とした。(社会部・垣花きらら、玉那覇長輝、政経部・大城大輔)
■判別しやすいデザインに
20年ぶりとなる新紙幣の特徴は誰にでも分かりやすい「ユニバーサルデザイン」で、視覚障がい者にとって判別しやすい工夫が施されている。
現紙幣と異なるのは識別マークやホログラム、数字の大きさなど。以前からあった視覚障がい者が指で触って判別するための識別マークは、11本の斜線がそれぞれの紙幣で異なる配置となった。現紙幣の1万円札と5千円札にあるつるつるしたホログラムは左下に統一されているが、新紙幣では千円札も含めてそれぞれ違う位置になった。
県視覚障害者福祉協会の仲松佳恋さんは「非常に分かりやすくなった。以前までは紙幣を判別するための『紙幣見分け板』を持ち歩いていたが、触るだけで分かるようになるかもしれない」と期待した。
一方で洋数字は大きく見やすくなったが、漢数字は左上に小さく変更された。「弱視の人は『0』がいくつ並んでいるか見えにくいことがある。洋数字で見分けるのに慣れていない人にとって、漢数字の表記が小さくなったのは気になる」と説明した。
同協会の知花光英会長は「判別しやすくなり使うのが楽しみ。ただ識別マークは紙幣が使い古されてしわができると、再び分かりづらくなる可能性がある。実際に使って検証したい」と述べた。(社会部・末吉未空)
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