7月1日に迎える富士山の山開き。今年から富士山史上初となる「登山規制」が始まります。「サンデーLIVE!!」では、山梨県側・静岡県側の登山口を取材。増加する訪日客の反応は。山小屋の対応は。そもそもなぜ規制が必要。富士登山の“新ルール”を詳しく解説します。
■「大混雑」「弾丸登山」…富士山が抱える課題
取材ディレクター 山田寛明
「山梨県側の富士山5合目まで登ってきました。登山道の入口にゲートが設けられています。7月1日から新たに始まるのが、通行規制と通行料の徴収です」
富士山山頂への登山ルートは山梨県側に1つ、静岡県側に3つと全部で4つあります。7月1日から山梨県は、登山客の約6割が利用する、山梨・吉田ルートを、登山者数の上限を1日当たり4000人とし、午後4時から午前3時までの間はゲートを閉めるほか、1人当たり2000円の通行料を徴収します。
山梨県 長崎幸太郎知事
「多くの登山者の皆さんが訪れることで、山頂付近の混雑による事故発生の危険、あるいはゴミの不法投棄による環境破壊の増大。さらには弾丸登山者のマナー違反、こういうものに長年悩まされてきたところであります」
去年、富士山を訪れた登山客は約22万1000人。去年7月に撮影された映像では、人が多すぎて先へ進むのもままなりません。
■富士山初の登山規制…訪日客の反応は
7月1日から始まる「登山規制」は、安全に富士登山を楽しんでもらうためのルールです。
東京から来た人
「いろいろな問題があるからいいんじゃないですかね。外国の山もいろいろ規制があってお金を取ったりしている。いいんじゃないですか、日本一の富士山ですから」
29日の山梨県側の富士山5合目には、多くの訪日客の姿がありました。新たなルールをどう思っているのでしょうか。
アメリカから観光客
「賛成です」
「良いことだと思います」
「より安全に登れるのであれば払いますよ」
カナダからの観光客
「納得できます。登山客があまりに多すぎるといけないし、“弾丸登山”も良くない。カナダだと、デリケートな場所は入場を制限したり料金を取ったりしているので、そういうのは必要じゃないかな」
■山小屋は新ルール効果に期待も周知状況に懸念
富士山五合目で、70年近く休息の場を提供してきた山小屋「富士山みはらし」。7月1日の山開きに向け、登山客を迎える準備が進んでいました。新たに始まる「登山規制」については…。
富士山みはらし 井出雄貴専務
「弾丸登山の規制などいろんな目的がありまして、これ自体は非常にいい効果を上げられるのではないかなと考えております」
一方で懸念しているのは、訪日客への周知です。
富士山みはらし 井出雄貴専務
「富士山は世界中からお客様が来られます。山梨県が主導でPRをしているんですけれども、それでも知らずに来たという方がやはりいると思うんですよね。海外からすごく楽しみにして来たのに、『午後4時以降だから登れません』と言って、それを納得していただけるか」
山小屋では、外国語が話せるスタッフを配置し、予約時に登山規制について説明するなど対策を講じています。
富士山みはらし 井出雄貴専務
「ルールを守った中で登っていかないと、毎年亡くなっている方もいるので、安全に帰ってくるというのを一番の皆さんの目標にしていただきたいなと思います」
■なぜ?静岡側は「規制なし」今後の規制検討も
静岡県側の登山口では…。
取材ディレクター 安藝拓巳
「静岡県側の登山道、富士宮ルートです。静岡県側3つのルートでは登山者数は制限せず通行料は導入しない方針です」
静岡県側の3ルートも今年から入山の際に任意の事前登録システムを始めます。通行料を義務化した山梨県に対し、静岡県側は通行料を徴収していません。2つの県が足並みをそろえられなかった理由について、静岡県の担当者は、登山道の多さにあると話します。
静岡県 富士山世界遺産課 大石正幸課長
「静岡県の方は、もちろん規制が不要とかそういう考えではなくて、ただ土地が『県有地ではない』ということで、土地を借りることの話し合いというのもありますし、(山梨県と)同じようなことを静岡県でと考えた時に、どういう形でゲートを設けるか、あるいは24時間人を配置しなければいけないということになると思うんですが、3カ所もありますし、受け入れ態勢というところでなかなか厳しいところ。山梨県の今年の状況を見ながら、静岡県も並行して規制ということも検討していくということでは考えております」
■“無料”の静岡側 登山客のマナーに心配も
山梨側の通行料の義務化で、静岡側の登山者が増加することも期待されています。
東京から来た人
「(人が増えることについて)悪くはないかなと思いますね。富士宮口はかなりきついというのがきいているので、無理なくケガなく登っていただけるのであれば」
神奈川から来た人
「(外国人が)日本式じゃない考え方で登られちゃうと困るんじゃないですかね」
迫る山開きを前に、富士宮口6合目にある山小屋「雲海荘」では準備に追われています。
雲海荘 渡辺尚俊代表
「これは金剛杖です。山小屋独特のものなので、昔ながらの杖をついてスタンプラリーのように山小屋の焼き印を押して頂上まで、というのが昔ながらの登り方」
今年は登山者の増加を見込んで杖の在庫を3割ほど増やしたといいます。
雲海荘 渡辺尚俊代表
「人が増えるのは商売的にはいいですけど、人が増えればまたトラブルも増えやすいのでね。期待半分、不安半分のような。有償でも無償でもどちらでもいいんですが、(静岡県と山梨県で)そろえた方がいいと思うんですよね。山梨県側で有料になったことを嫌ってこちらに来る方たちは、出費を抑えようという方たちがやっぱり多くなる。そういう方たちはやっぱり通常でも弾丸登山をしてみたりとか、ちょっと無理なスケジュールで登山したりするような傾向があるので、全部が全部ではないですがマナー的にあまり守れないような人が増えちゃうのを心配しますね」
■そもそもなぜ登山規制?世界遺産抹消の危機も
弾丸登山やオーバーツーリズムなど富士山には課題がある中、地元の山梨県知事がある懸念を表明しました。それが「世界遺産の登録が抹消される」という懸念です。
今月17日、山梨県の長崎幸太郎知事は、「世界遺産委員会から我々は3つの宿題をもらっている」と明かしました。3つの宿題とは、「登山者が多すぎる」「コンクリートの駐車場など人工的景観が目立つ」「(ゴミ問題をはじめ)環境負荷が大きい」ということ。こうした指摘に真摯に対応しないと、最悪の場合、世界遺産登録を取り消される恐れがあるというのです。
登山者をルート別に見ると、山梨県側の吉田ルートが約62%と最も多くなっています。7月1日から、この吉田ルートで登山規制が始まります。
その一つが、通行規制です。午後4時から午前3時まで5合目の登山道入口ゲートを閉鎖します。夜間に出発し、山小屋に泊まらずご来光を拝みすぐ下山する「弾丸登山」を防ぐ狙いがあります。さらに、1日の登山者の上限を4000人に制限。混雑を緩和し、環境負荷を軽減する狙いがあります。
■入山料170万円!?海外の山では一般的な制度
規制の二つ目が、安全対策などに必要な費用の負担です。通行料(施設使用料)として1人あたり2000円が徴収されます。これまで同様、任意で富士山保全の協力金1000円の協力も求められています。
例えば、世界最高峰のエベレストでは、ネパール側からの入山料は約170万円とされ、さらに現地のガイドを雇うことも義務付けられています。山岳利用に対する料金と、地元への経済還元が明確化されています。
また、アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロは、滞在日数により異なりますが、国立公園の保全費として16歳以上は1日約1万1000円、5〜15歳は1日約3200円が必要で、現地のガイドを雇うことも義務付けられています。
(「サンデーLIVE!!」2024年6月30日放送分より)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。