和歌山地方気象台は、防災気象情報活用や災害対応で民間のライフライン機関や住民に対してきめ細かく支援するため、新たにリスクコミュニケーション推進官を配置した。4月に「初代」として就任した杉岡成彦さん(60)は「大雨などの際は最新の気象情報をきちんと受けることが大切。自分だけは大丈夫と思わず、避難など適切な対応をしてほしい」と話している。
近年は温暖化による異常気象や線状降水帯の発生など災害に直結しやすい「顕著な現象」が目立ち、周到な準備や正しい情報活用、突発事案に対する柔軟な対応が求められるようになっている。気象庁は2022年以降、大規模災害での犠牲者ゼロを目指して積極的に外部に職員を派遣する担当ポストを新設したが、その一つがリスクコミュニケーション推進官だ。地方気象台の防災対応は自治体との連携が多いが、生活を左右する鉄道や電気、通信、ガスなどの企業や報道機関との連携をさらに強め、防災意識の向上に取り組んでいく。
杉岡さんは入庁40年超のベテランで、防災対応やシステム関連などを担当してきた。現在は交通インフラやライフライン関係の会社を回って気象情報がどのように利用されているかを聞き取りしている。その際、企業や機関ごとに異なる必要な気象情報の入手方法を助言すると同時に、どのようなデータ提供が有効かをリサーチするという。
県内のある鉄道会社では、浸水、洪水、津波などの影響を受けやすい平地部や川沿い、海岸沿いの状況を優先的に確認できるように、気象庁のサイト表示をカスタマイズする方法を提案した。「気象情報の有効な使い方を伝え、組織マニュアルを作る手伝いもしたい」。インフラが災害時に維持されれば、地域全体の防災対策につながる。
前任地は徳島で、県内で働くのは約20年ぶりだ。近年は線状降水帯発生時のように短時間で集中的に雨が降ることが増えたと感じる。一方で、情報提供しても大半の住民が避難しないのが長年の課題だ。今年も梅雨入りし、台風発生の時期も迫っている。杉岡さんは「逃げてと言っても避難しない人もいるが、安全な場所にあらかじめ移動することこそ防災につながる」と話しており、有事の行動を考えておくことの重要性を改めて強調している。【加藤敦久】
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