全国12都県で、『ふわふわ』という障害者向けグループホームなどを展開する『恵』が、利用者から食材費を過大に徴収するなどしていたとして、愛知県と名古屋市が26日、最も重い処分を下しました。
現役職員(4年前から勤務):「(Q.利用者に請求してたのは)ひとり2万、食費として2万。(Q.使っていたのは)20人いて20万なんで、大体、倍ぐらいは。(実際は)ひとり1万分ぐらいの計算。最初からそんな感じだったと思う。(Q.最初からそんな感じというのは)お金は二十何万でやりくりしてという感じだった。ずっとそのまんまの感じで、僕自身も入ってからも」
愛知県・大村秀章知事:「極めて悪質、極めて強い悪意を持って意図的に行われた。それも組織的に行われたと」
愛知県によりますと、県が所管する13のグループホームで、利用者から食材費を過大に徴収。また、職員の数を水増しして、報酬を不正に請求していました。さらに、利用者が外泊して不在にもかかわらず、夜間に当該利用者への支援を行ったとして、夜勤職員加配加算が架空に請求されていました。
県は、1カ所を10月1日で指定取り消し、残り12カ所については、3カ月から1年間、新規での利用者受け入れを認めない、一部効力停止としました。
愛知県・大村秀章知事:「県の所管の13事業所だけで1億8600万円。返還請求の予定額が2億6000万円を超える。うちの13(事業所)だけでですよ」
名古屋市が所管するグループホームは6カ所。そのうちの4つのグループホームに対し、指定取り消し処分を下しました。
愛知県内の別の施設の利用者。とにかく、食事がひどかったそうです。
息子が入所の両親:「体重が入所したときは、70キロちょっとあったが、今は63か64キロくらい。7〜8キロやせた。本人はずっと(食事が)少ないと言っていました。不満を言ってしまうと行き場がなくなるかなと思って、我慢しなさいと。(Q.返金はあった)去年末に振り込まれていた。(Q.説明は)何もない。少ない食費で、何を食べさせていたのか教えてほしい。もうお金のことしか考えてないのかなって」
『恵』から名古屋市への不正請求は約9200万円。加算金を加えた返金額は、約1億2800万円に上ります。
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■職員が“食材を持ち帰り”関東の施設で、初めてショートステイを利用した人。3日間で食べたのは5食でしたが、9食分の請求が来たそうです。
ショートステイを利用した男性(40代):「後日、請求書が届いて確認したところ、3日間×3食事分の請求がありました」
ほかにも、事前に頼んだ弁当がないなど、打合せとは違いました。
ショートステイを利用した男性(40代):「最初、話で聞いていた内容と、実際、違っていたところもあったので、そこは裏切られた気持ちはありますね」
神奈川県の施設の元職員は、こんな光景を目にしていました。
神奈川県の施設の元職員:「食材が少ないのに、職員が食材を持ち帰ってしまったり、料理を作ったものもタッパーに入れて持って帰ったりするんですね。一応、『まずいんじゃない?』と声かけたりするんですけど、『平気、平気』という感じで、軽いノリで返されてしまって」
現在も、介護の現場で働いていますが、『恵』の労働環境には、不安を抱いたといいます。
神奈川県の施設の元職員:「未経験で入ったんですけれども、急にひとりで夜勤を任されたりとかして。初日に車いすの方のおむつ交換と車いすからベッドへの移乗とか、『できなかったら放っておいていいから』みたいな感じで帰られたりとかされて。でも、放っておくわけにはいかないので、Youtubeで自分で調べたりとかして、見よう見まねで、やっていました」
神奈川県の施設の元職員:「重度の方を好んで引き受けるんですね。重度の方は、一度入ると、次の施設に移ろうとしないので、ずっと儲かるからだそうです。社員の方が言うには。週末に自宅に帰る比較的軽めの利用者『帰すな』っていう指示がありましたね。週末もずっといてもらわないと、報酬が安くなるからだそうです。本社からの指示です。本社から回ってきたと言われてました」
愛知県の障害者団体には、数々の相談が来ているといいます。
愛知障害フォーラム・柳原康来事務局次長:「ご家族からの相談が多くて、例えば、面会に行ったんだけど、明らかにやせていると。一応、本人に聞くけれども、なかなか自分からの発信が難しい方が多い。そういうこともあって、なかなか実態を把握できない」
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■売り上げ急拡大「組織ぐるみの不正」株式会社『恵』が設立されたのは、2012年。その後、グループホームを展開し始め、信用調査会社の調べでは、2019年1月決算で、約3億5000万円だった売り上げは、4年後の3月決算では66億6000万円と、20倍近くとなっています。
厚生労働省の会見:「食材料費の過大徴収について、同社の本社等による組織的な関与が認められることから、障害者総合支援法に基づく“連座制”を適用することとして、本日、その旨を同社および関係自治体に通知した」
厚生労働省は、不正を組織ぐるみだと判断し、6年ごとに行われる事業指定の更新を認めないことを決めました。全国に104ある『恵』のグループホームは、今後、事実上の事業停止となります。
ただ、利用者にとって、施設を変えるのは、簡単なことではありません。
愛知障害フォーラム・柳原康来事務局次長:「例えば、住む場所が変わる、関わる人が変わるというのは、私たちが想像している以上にストレスですし、場合によっては、そのストレスが原因で、自傷行為や人を傷つけてしまう行為につながる場合も考えられますので、本人にとってもしんどいですし、周りの方にとっても、すごく影響が出てくるんではないかと考えます」
取材に対し、『恵』は「真摯に受け止めて、今後の対応を検討していく」としています。
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■食費の過大徴収…全国で約3億円◆今回、行政処分を受けたのは、全国104カ所で障害者向けのグループホームを運営する『恵』。事業所の定員は、合わせて約1800人です。
愛知県と名古屋市は、県内の27の事業所のうち、5つの事業所に“事業者指定取消”の行政処分を行いました。早ければ、今年8月31日、遅くても12月1日までに指定が取り消されます。
この処分を行う理由としては、入所者から食材料費を過大に徴収、勤務実態のない職員が働いているように装い、障害福祉サービス報酬を不正に請求したこと。食材料費に関しては、愛知県と名古屋市が管理する18の事業所で、合わせて約1億7000万円が過大徴収されました。また、不正請求に関しては、合わせて約3億円が請求されました。
食材料費の過大徴収に関しては、実は、全国的に行われていました。厚生労働省によりますと、104カ所の事業所のうち、10の都と県の77カ所で、合わせて約3億円が入所者から過大に徴収されていました。
“指定取消”を受けると、今後、どうなるのでしょうか。
厚労省によりますと、指定取消=事業停止ではなく、給付がなくなることだといいます。給付がなくなると、経営が厳しくなるので、“事実上”廃業となる場合が多いといいます。そして、今回は、組織性が高いとして、いわゆる“連座制“を適用する方針です。
愛知・名古屋の5つの事業所は、遅くとも年内には指定取消になりますが、いわゆる連座制が適用されれば、ほかの事業所に関しては、指定取消の処分日から、5年間は指定の更新はできないとしています。
今後について、各自治体に聞きました。
千葉県は「すぐに事業停止、入所者の転居が必要な施設はない。指定取消になる場合は、それまでに入所者側と事業者側でどうするかを話し合う」としています。
茨城県は「すぐに事業停止にはならないが、利用者が継続してサービスを受けられるよう、関係自治体と課題を共有する」としています。
愛知県は、事業所が指定取消になった後のことについて、入所者の意向を丁寧に把握して、必要なサービスに適切につなげるよう各市町村に要請、県が市町村にアドバイザーを派遣し、転居先などの調整をバックアップ、障害の程度が重く、転居先がない入所者は、県の施設での受け入れを検討するとしています。
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