大阪・関西万博の「国際参加者会議」に臨む各国の参加者=奈良市で2024年6月25日午前9時51分、滝川大貴撮影

 2025年大阪・関西万博の海外パビリオンの建設が遅れている問題で、日本国際博覧会協会は、25年4月の開幕までに建物を完成させる見通しが立たない国に対し、敷地の返上を求める方向で最終調整している。複数の協会関係者が取材に明らかにした。返上された敷地は休憩スペースなどに転用する方針。一方、参加国には一部の工期延長を求める声もあり、協会は個別に交渉して理解を得たい考えだ。

 奈良市では25日、参加国を集めた「国際参加者会議」が始まった。万博には18日現在で161の国・地域と9国際機関が参加を表明しており、会議には各国の代表ら約590人が出席した。

 博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長はあいさつで、「開幕まで300日を切った。タイムリーな意思決定をするため、合意を促したい」と決意表明。協会の石毛博行事務総長は「準備は建設から運営に大きくシフトしている」と述べ、次の段階に進むべきタイミングであることを強調した。

 参加国が自前で建設する「タイプA」のパビリオンは、資材や人件費の高騰で建設業者との契約が難航。当初は約60カ国が希望していたが、19日現在、51カ国まで減った。うち32カ国が着工。11カ国は建設業者が決まっていない。協会はパビリオンを囲む大屋根「リング」内での大型重機を使った工事を10月中旬までに終えるよう求めており、タイムリミットが迫っている。

 ある協会幹部は建設が遅れている参加国と敷地の返上を含めて協議することを認めた上で、「主催者として来場者を安全に迎える責任があり、(敷地を)空き地にするわけにもいかない。(参加国には)その責任を果たす手段を考えていくと伝えている」と述べた。

記念撮影に納まる大阪・関西万博の「国際参加者会議」の出席者ら=奈良市で2024年6月25日午前11時40分、滝川大貴撮影

 一方、Aを希望する国の中には、大型重機の使用期限の延長を求める声もある。会議の会場で取材に応じたポーランド政府副代表は「6月18日に建設業者が決まったばかりだ。開幕までに工事を終えられるとは思うが、10月中旬の重機工事完了を守るのは難しく、数週間遅らせるよう(協会に)お願いしている」と述べた。別の国の代表も「今はたくさんの工事が行われており、締め切りを守るのは難しいのではないか」との見方を示した。

 Aを断念する国も続々明らかになった。会議に出席したパキスタンとイスラエルの関係者は取材に、いずれもAから協会が建設する共同入居型の「タイプC」に移行したと述べた。イスラエルの関係者は「中東情勢の影響で予算的な制約が生じた」などと理由を説明した。

 また、アルメニアの関係者もAからCに変えるつもりだと語った。7月に着工予定だったが、本国で5月に水害が発生。復旧を優先させるためといい、協会と最終調整している。【高木香奈、郡悠介、東久保逸夫】

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