行方不明者の捜索や犯罪捜査に協力する埼玉県警の嘱託警察犬指導士、羽鳥雄太さん(18)は、さいたま市で70年以上続く老舗訓練所の「4代目」だ。飼育・訓練した嘱託警察犬は、警察の要請に応じて現場に出動する。6月の現場デビューでいきなり行方不明者を発見した羽鳥さんに、初めての現場で感じたことや訓練士としての思いを聞いた。【安達恒太郎】
――訓練士を目指したきっかけは。
◆約70年前に曽祖父が設立した警察犬訓練所を家族で運営しています。幼いころから犬の世話や訓練などを手伝っていました。高校生になって将来の進路を真剣に考えた時、頭に浮かんだのは仕事をする父(文仁さん)や祖父(敏雄さん)の姿でした。困っている人を助ける父や祖父を純粋に「かっこいい」と思ったのが一番の理由です。
深夜の出動要請があったり、早朝から犬の世話などをしたりとハードな仕事だということは父らの姿を見て理解していました。それでも憧れる気持ちが上回りました。
――いつから訓練士として活動を?
◆4月に県警の嘱託警察犬の審査会に相棒のジャーマンシェパード「アレックス号」(雄・8歳)と参加して合格。6月から任務に就いています。周囲から「期待しているからね」と声をかけられることもあります。うれしさ反面、重圧も感じています。
――1日の生活は。
◆父からの助言もあり、平日は都内の動物看護師専門学校に通っています。帰宅後や土日に訓練に励んでおり、土日は午前8~午後6時に及ぶこともあります。訓練では犬が指示通りに動くための服従訓練、においを頼りに対象者の経路をたどる追及訓練、埋没物を探し出す地域捜索などに取り組みます。本番を想定した訓練を重ねて、出動に備えています。
――先日の現場デビューの感想は。
◆6月中旬、行方不明者捜索のため初出動しました。父のサポートもあり、捜索対象者を無事に発見することができました。まさか初日に捜索対象者を発見することになるとは思っておらず、発見後、しばらくは手が震えるほど驚きました。同時に行方不明者を見つけることができたので、やりがいを感じることができました。
――どこに難しさを感じましたか。
◆訓練と本番とでは全く違いました。敷地内で行う訓練と異なり本番では散歩中の犬や通行人、車も走っています。犬だけに集中できない環境で、広い視野が求められると感じました。
また、犬が経験のない反応や行動を取ることがありました。コミュニケーションが十分に取れておらず、犬の行動の意味を感じとれない場面もありました。反省点を意識して訓練に励みたいと思います。
――どのような訓練士を目指していますか。
◆父や祖父のように困っている人を助けたいです。その思いを持って訓練士を目指しました。1人でも多くの人を助けられるような訓練士を目指していきたいです。
羽鳥雄太(はとり・ゆうた)さん
2005年、さいたま市浦和区生まれ。高校卒業後、動物看護師の専門学校に進学。24年6月、県警から嘱託警察犬指導士として委嘱された。1952年に曽祖父が設立した「浦和第一警察犬訓練所」(同区元町1)を家族で運営。
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