群馬県は21日、生活保護費を巡る不適切な対応が相次ぐ桐生市に特別監査で6回立ち入り、生活保護法など関連法の違反や不適切事例が多数確認されたとして、是正改善措置を指導したと発表した。19日付。是正指導は記録が残る2010年度以降で県内初。受給資格があるのに申請を拒否したとみられる事案が数十件あり、実態が把握できないのに家族らの仕送りなどを理由に支給しなかった事案も約70件に上った。【田所柳子】
県地域福祉課の米沢孝明課長は「水際対策は組織的な実施が確認できなかったが、疑われる事案は多数あった。保護人員が10年で半減した一因になっているのではないか」と指摘。必要な記録がないケースも多くあった。監査結果は市の第三者委員会にも共有する。8月までに受給者の権利尊重や「規程」整備などの改善報告を求め、今年度中に一般監査にも入る。
明らかになった不適切事案の数々
福祉施設に入居する女性に18、20、21各年に長男の扶養を理由に支給しなかったが、長男は行方不明で、扶養届は施設職員が代筆していた事案も新たに判明。県は実態のない扶養が不支給の理由となっているのは不適切と判断した。県内の自治体で代筆した扶養届を認定したケースは例がないという。
県が市に残る18年4月~23年12月の記録を調べ、職員に聞き取りした。面接記録約450件のうち70件以上を不適切とみて調べたところ、数十件は不当に申請させなかった疑いがあった。保護の必要が差し迫った市民を「家族が協力すれば困窮に至らない」「まずは仕事を見つけるのが最優先と助言した」と却下。申請資格のある市民が「年金支給額が2万円以上減った」と相談したところ、「まず年金事務所に確認するように」と一時却下した例もあった。
家族らの仕送りを理由に支給しなかった約70件のうち、申請者の姉が「金銭援助できない」と言ったのに、後で「姉が不足額を援助」と修正され、実際の扶養は確認できないケースもあった。市が窓口で支給した際の受領簿も、1日ごとの分割を一括のように記録しただけでなく、日付を毎月5日の決まった支給日でなく、実際には支給していない10日や25日などで多数記録していた。職員は「慣例で引き継がれていた」と説明した。
特別監査の立ち入りは1月17日以降に実施。市が公表している全額を支給しなかったケースで新たな事例は確認できなかったが、県は全額の不支給なら生活保護法違反で、「市が一時的に預かっていた」との市の主張通りなら、自治体が所有しない現金の保管を禁じた地方自治法違反と認定。それ以外の分割支給や保管した印鑑の使用、申請と支給を拒否した対応については少なくとも不適切な対応だったと判断した。
県は再発防止のため、各福祉事務所に対し、生活保護受給者の権利や生活を維持する観点で研修や講義、自治体への監査を強化する。
荒木市長のコメント
県の特別監査の結果を受け、改めて、市の生活保護行政を生まれ変わらせなければならないと強く感じている。今回の特別監査で指摘された事項は福祉事務所で精査の上、早急に是正改善措置を講ずるよう指示した。監査結果を真摯(しんし)に受け止め、信頼回復に向けて適正な生活業務を行うべく、引き続き改善に取り組んでいく。【遠山和彦】
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