都営地下鉄の駅運営業務を東京都交通局から受託する一般財団法人「東京都営交通協力会」(江東区)が、社員と労働契約を結ぶ際に労働条件を書面で明示しなかったのは労働基準法違反にあたるとして、中央労働基準監督署が是正勧告をしていたことが判明した。
協力会に対しては2023年1月以降、都内の各労基署や東京労働局から相次いで行政指導があり、今回で11回目。公的な組織がわずか1年半の間に、これだけ多くの指導を受けるのは異例だ。
協力会などによると、是正勧告は6月14日付。契約社員から正社員に登用した従業員に対し、就業の時間帯や休日、賃金などの詳細を記した「労働条件通知書」を、働き始めの4月1日までに交付しなかったという。実際に配られたのは同月半ばだった。
協力会の担当者は取材に対し、賃金に関する労使交渉が例年より長引き、速やかに配布できなかったと説明。「今後はいかなる事情でも期日までに交付したい。引き続き関連法令を順守していく」と話した。
協力会は都営地下鉄の約半数の駅で窓口業務やホーム監視などを担う。23年1月以降、割増賃金の未払いや出退勤時刻の未把握があったとして亀戸労基署から是正勧告を受けるなど、労働問題が繰り返し指摘されてきた。労働条件の通知に関しても同2月、職員募集の応募者に書面を交付しないのは職業安定法に違反するとして、東京労働局から是正指導を受けていた。
同9月には労働時間に含まれる着替え時間の割り当てに正社員と契約社員で格差があったとして、池袋労基署が指導票を交付。他にも、交通局の職員から直接業務の指示を受ける「偽装請負」の疑いも指摘されるなど、問題が相次いでいる。
また、駅業務での金銭管理を巡り、同8月に都営地下鉄浅草線の東銀座駅(中央区)で「出所不明」のプール金約2万円が見つかる不祥事もあった。外部調査委員会が設けられ、原資は未処理の精算金で私的流用はないと結論づけたが、「公金に対する意識が希薄」と指摘した。【黒川晋史】
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