環境省は20日、東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域の避難指示を解除する新制度「特定帰還居住区域」のうち、福島県浪江町内での除染作業を始めた。特定帰還居住区域の除染着手は大熊、双葉両町に続く3番目で、今夏までに富岡町でも除染が始まる。
特定帰還居住区域は、除染やインフラ復旧を優先的に進めた「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)から外れた帰還困難区域のうち、帰還希望者の自宅周辺を国費で除染し、2029年末までに避難指示を解く仕組み。これまで4町計1900ヘクタールが認定された。浪江町は最大の710ヘクタールで、同省は今年度事業として52・6ヘクタール分の除染を発注した。
この日は山あいの羽附(はつけ)地区で農地除染の様子を報道機関に公開。かつての水田には高さ3メートル近い雑草だけでなく、木が生えて森のようになった場所も。同省は草木を刈った後、表土を重機ではぎ取り、家屋の解体も順次進める。
23年に原子力規制委員会が航空機モニタリングで測定した空間放射線量(高さ1メートル)によると、浪江町の帰還困難区域には毎時0・3マイクロシーベルト台と比較的線量の低い集落がある一方、避難指示解除の目安となる同3・8マイクロシーベルトを超え、同6マイクロシーベルト台の集落もある。
同省福島地方環境事務所の中村祥・環境再生課長は「特定帰還居住区域が山あいに点在し放射線量も均一ではないため、周辺の影響も確認しながら丁寧に除染を進めたい」と話した。汚染の濃い場所は足元の地表だけでなく、山林や建物など周辺からの放射線の影響も大きい。また、線量が高い場所では、同省がガイドラインで示す5センチを超える厚さで表土をはぎ取る必要も出てくるとみられる。
裏手が斜面の山林になっている民家や、狭い私道を通らないと行けない民家も多い。同省の担当者は「線量低減を図りつつ、土砂流出も起こさないように留意する必要がある」と話す。冬場の積雪や路面凍結もあり、活動期間にも制約が生じそうだ。【尾崎修二】
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