車椅子利用者が主役――。そう銘打ったリフト付の観光ミニバス「キューティ・ビワ ミニバス」が6月13日から琵琶観光バス(滋賀県長浜市永久寺町)で本格導入された。「愛する人を後悔しないうちに思い出の場所や希望の場所に連れて行ってあげてほしい」という同社社長、西川定良さん(75)の一念が実った。車椅子利用者が気軽に旅に出るきっかけになりそうだ。
昨年、西川さんはテレビで末期がん患者とその家族が最後の思い出を作ろうとラストドライブに出掛けるドキュメンタリーを見て感動し、ちょうど1年前に今回導入したバスの構想を考えたという。
その際、西川さんが絶対条件としたのは車椅子利用者が「主役」になれること。「現状の福祉車両バスなどはリフトが後部ドアに装着されており、車椅子がいかにも荷物のように積まれている印象があった」。そこで中古のワンボックスカーを改造し、車両後部ではなく、あえて側方のスライドドアにリフト(最大荷重360キロ)を取り付けた。車椅子利用者が車の中央部に直接乗り込める仕組みで、家族ら同乗者に囲まれて旅を楽しんでもらおうとの考えだ。
ただ、側方ドアから車椅子ごと乗降できるリフト機構は国内では見つからず、海外製品を探した結果、イタリア製のものを見つけた。テレビや冷蔵庫なども付けたため車両改造費は約300万円にもなったが、中小企業庁から約180万円の補助金を受けて実現にこぎ着けた。
運転手に加えて、旅客定員は11人(うち車椅子利用者は原則2人まで)。車椅子で車内に入ることはできるが、車のシートに座り直す必要があるため、座位保持可能な人が対象となっている。シートの前には車椅子2台を収納するスペースもある。
車が入れる道なら自宅前からの出発も可能。旅行や冠婚葬祭、同好会への参加などさまざまな使い方が想定され、障害の程度や行程などの相談、無料見積もり、予約を得て利用できる。人数ではなく、時間と距離で見積もりを計算するため、発着地、目的地、利用時間の情報が必要となる。
西川さんは「ラストドライブでなくても、歩行困難となって外出にちゅうちょしている人がいるようなら、いつでも家族や仲間がその人を連れ出せるようなバスにしたい」と話した。
琵琶観光バス(0749・62・4908)。【長谷川隆広】
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