荒船風穴の1号と2号の風穴が描かれた水彩画。まだ3号はない=群馬県下仁田町教育委員会提供

 群馬県下仁田町は19日、世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の一つである同町南野牧の荒船風穴の設計図が初めて見つかり、蚕の卵(蚕種)を低温貯蔵できるよう冷風の吹き出し口と出入り口を分ける独自の構造だったことが確認されたと発表した。蚕種を国内だけでなく中国に販売した記録も見つかった。低温を維持するほかの風穴にない工夫や当時の取引規模の大きさが分かる貴重な資料という。

 風穴を経営した庭屋家の関係者が昨夏から今年初め、町に約200点の資料を寄贈。このうち、1号風穴の設計図(縦76センチ、横123センチ)は、建造に着工した1905年10月以前に作られたとみられ、1~3号を含め正確な設計図が見つかるのは初。荒船以前の各地の風穴は食料などを貯蔵するため、冷風の吹き出し口に直接出入りするが、荒船ではその上の建屋に出入り口を作り、低温が維持できた。現在、冷風吹き出し口の石垣は残るが、上の建屋はなく、「当時最新だった構造が分かる非常に貴重な資料」(町歴史館の秋池武館長)という。

荒船風穴の1号風穴の設計図=群馬県下仁田町教育委員会提供

 11年の「御得意名簿」には蚕種販売先として清国末期の中国・北京にいる日本人の名前が記録されていた。蚕種を預かって貯蔵した取引先は少なくとも国内各地と朝鮮半島だったが、より広い地域で取引をしていたことが明らかになった。11年以前に風穴と番舎を描いた水彩画(縦67センチ、横97センチ)も新たに見つかり、風穴を守る柵が存在し、敷地で鶏を飼う当時の様子がわかる。

 町教育委員会は25日から11月30日まで、同町下小坂の町歴史館でこれらの資料や写真、飼育日誌、販売台帳など寄贈資料約20点を初公開する。月曜休館、入館料は200円で高校生以下は無料。【田所柳子】

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