1952年に熊本県で起きた殺人事件でハンセン病とされた男性が無実を訴えたまま隔離施設内の「特別法廷」で裁かれて死刑になった「菊池事件」の再審請求で、熊本地裁(中田幹人裁判長)は14日、再審を求める弁護団が申請した九州大名誉教授、内田博文氏(刑事法)を証人尋問に採用すると決定した。弁護団が明らかにした。内田氏は「憲法違反の裁判手続きは再審開始の理由になる」と主張しており、地裁の判断が注目される。
菊池事件を巡っては、熊本地裁が2020年3月、隔離施設で開いた特別法廷を憲法が保障する平等原則などに違反したと判断。21年4月には男性の遺族が再審請求しており、地裁、検察、弁護団による非公開の三者協議が続けられていた。
弁護団はこれまで、新証拠として有罪の根拠の一つなった親族の供述の信用性を否定する心理学者の鑑定書や遺体の状況などから、凶器を短刀と認定した確定判決の内容を否定する法医学者の鑑定書などを提出している。これとは別に、憲法違反の裁判手続きが再審の理由になるとして「憲法的再審事由」を主張してきた。弁護団によると憲法違反とされる裁判手続きが再審請求事件で争点になるのは初めてという。
弁護団が提出した意見書で、内田氏は、戦前の旧刑事訴訟法を踏襲した現行の刑事訴訟法における再審法は日本国憲法との隔たりが大きく、憲法違反の手続きがなされたことを再審請求事由にする明文規定がないことが大きな不備であると指摘。その上で「著しい憲法違反を理由として再審請求をすることを認めるべきだ」などとしている。
三者協議後に記者会見をした弁護団の徳田靖之弁護士は「我々としては再審開始に向けた大きな一歩を踏み出したと考えている」と話した。【野呂賢治】
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