政務活動費(政活費)を受け取っていない奈良県大和郡山市議が個人で他の議会などを調査するための経費として、1人年15万円が予算化されていることが関係者への取材で判明した。全国9割の市議会が交付する政活費と違い、訪問先や目的はかなり限定される一方、調査内容や経費の使用明細は一般に公開されず、透明性が高くはない「隠れた政活費」とも言えそうだ。
市議会事務局によると、地方自治法100条13項(議員派遣)の規定に基づく。議案審査やその自治体の事務に関する調査のために必要な場合、議会は会議規則により議員を派遣できるという内容だ。政活費なら民間の議員研修への参加など幅広く使えるが、この議員派遣では、他の議会など訪問先や目的は限られ、事前に厳密に吟味される。
派遣が認められれば、議会事務局は条例などの規定に従ってグリーン料金を含む旅費や定額の宿泊費、日当を事前に支給する。議員は調査後、成果を示す報告書を議長に提出する必要があるが、経費に関しては実費精算ではないため、領収書提出は求められないという。
地方自治法では100条13項(議員派遣)の次の14項で「政活費」が定められている。多くの議会が政活費の交付を始める中、政活費を受け取らない大和郡山市議会は古くからの規定に基づき公費支出を続けているとみられる。政活費が交付されている議会の場合、議員が個人で調査や視察をする際には政活費を充てるのが原則で、領収書を含む収支報告書は公開対象になる。
15万円の予算枠について市議の1人は「本来は政活費を受け取り、その中から支払うべきものだ」と話す。
大和郡山市議会は2020年度まで、常任委員会分として1人10万円も予算化。議員派遣に関し1人計25万円の枠が確保されていた。委員会分は20年度は使わず、21年度以降は予算化していない。
大和郡山市議の月報酬は56万円で、人口5万~10万人の市議会の平均約40万円を大きく上回り、23年末で全国で3番目に高い。約10年前の議会改革議論では、政活費を受け取っていないことを高い報酬を維持する理由の一つにしていた。
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政活費は県内12市では10市議会が受け取っていて、大和郡山より人口が多い橿原市は年50万円、生駒市は年36万円。全国的に使い切る議員はほとんどなく、1円も使わない議員も多い。
議員の視察費用について、大和郡山に人口が近い県内6市(橿原、生駒、香芝、大和高田、天理、桜井)の議会事務局に取材したところ、大和高田は政活費以外に調査・視察で使える予算はなかった。他の5市は政活費とは別に、常任委員会視察分として一定額(橿原が1人上限10万円など)を予算で確保していた。だが、政活費以外で議員個人の調査・視察に使える予算は原則としてなかった。
一方、大和郡山市と同様に政活費を交付していない葛城市議会では、議会全体や委員会視察などの経費(1人6万円)は予算化しているが、個人分はないという。【熊谷仁志】
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