埼玉県日高市は今夏、曼珠沙華(まんじゅしゃげ)(ヒガンバナ)の群生地として知られる「巾着田」の観光振興に向けた実証実験を始める。ゴミの放置が課題となっていた高麗川河川敷のバーベキュー利用を有料化するとともに、エリア全体で集客力を高める取り組みを進め、環境保全と観光地としての魅力向上を狙う。市は一連の観光振興策を4日に発表する。
実験では、バーベキュー利用に事前予約制を導入し、1人あたり予約客は1000円、当日来場者からは1500円をそれぞれ徴収する(小学生500円、未就学児無料)。期間は利用者が年間で最も多い8月5日~18日で、時間帯は午前9時~午後4時。水遊びや散歩などは無料。
市はバーベキュー利用者にゴミの持ち帰りを呼びかけてきたが、放置されるケースもあり回収が負担になっていた。有料化による収入をゴミ袋や回収サービスの費用に充てる。事前予約制を導入することで利用者を1日500人程度に抑え、ピーク時の河川敷の混雑や周辺の交通渋滞の解消にもつなげる。
有料化とあわせ、巾着田エリアの夏の観光地としての魅力を高める実験にも取り組む。キッチンカー出店ゾーンを新たに設けるほか、現在は倉庫になっている場所にバーベキューの受付や物販拠点を設けたり、国の登録有形文化財「高麗郷古民家」などでイベントを開いたりする。詳細は今後詰める。
巾着田を訪れる人は、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年度は約64万人だったが、23年度には約40万人に減り、このままでは維持管理が難しくなる恐れもあるという。関係者は「観光客にせっかく来てもらってもお金を落とすところが少ない」とも話しており、実験を通じた魅力向上で地域経済の活性化につなげる考えだ。
巾着田とその周辺は秋の「曼珠沙華まつり」に多くの観光客が訪れるほか、市が「遠足の聖地」としてPRしており、春には小学生らの利用も多い。これに加え、冬季についても河川敷でのキャンプや、曼珠沙華の花が枯れた後に出現する一面の葉の緑をアピール材料にできないか検討、年間を通じたにぎわいづくりを模索する。
バーベキュー利用者を対象にした河川敷の有料化は、隣接する飯能市が23年度から入間川沿いの「飯能河原」で始めている。巾着田や飯能河原の活性化は、まちづくりや創業をサポートする埼玉りそな銀行の子会社「地域デザインラボさいたま(ラボたま)」が支援している。【増田博樹】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。