将棋界八大タイトルの1つ『叡王』を掛けた五番勝負第4局は、藤井聡太八冠(21)が勝ちました。これで2勝2敗になり、タイトルの行方は、最終第5局に持ち越しです。
藤井聡太八冠:「自分にとって大きな一局、全力を尽くしたいとは思っていた。次も大事な一局になる。それに向けて、しっかりと状態を整えていければ」
第4局は、31日午前9時から挑戦者・伊藤匠七段(21)の先手で始まりました。
タイトルをかけ向かい合う2人の若手棋士。子どものころからライバルと呼ばれていました。
2人の関係は、小学3年生の時にまでさかのぼります。将棋の全国大会で顔を会わせ伊藤七段が勝ち、藤井八冠は号泣したそうです。
その後、2人は、関西と東京に別れ、プロ棋士養成機関である奨励会に入ります。そして、それぞれ頭角を現し、『西の藤井、東の伊藤』と呼ばれるようになりました。
しかし、プロ入り後の2人には大きな差が出ます。
藤井八冠がプロ入りした4年後、17歳で伊藤七段もプロ入りしますが、とにかく藤井八冠に勝てなかったのです。この叡王戦シリーズで初勝利をあげるまで、1つの引き分けをはさみ、11連敗を喫していました。
伊藤七段の師匠・宮田八段は、どんなに負けが込んでも、いつか巻き返すことを信じていたといいます。
宮田利男八段:「プロになったときに『酒とギャンブルは絶対ダメ』と。そんなの言う必要もないくらい将棋漬けです。負けて落ち込むんじゃなくて、それがエネルギーになっている。もっと強くならないといけないとなっていたんじゃないかな。皆さんが思うほど、信じられないくらい勉強しています。昔ではあり得なかったでしょうね。(Q.藤井八冠に負けてから)そうですね。どうしても追いつきたいでしょうから、本人は」
伊藤七段を10代のときから知るプロ棋士は、このシリーズで伊藤七段の変化を感じていました。
飯島栄治八段:「藤井八冠以外の棋士に負ける可能性が高まるかもしれないけれど、藤井八冠対策に重きを置いた。どう見ても(対策に)費やす時間が違うんじゃないかと。ほぼ全部じゃないですか、8〜9割。終盤まで研究しているんですよ、伊藤匠七段は」
伊藤七段は、タイトルを奪うため、藤井八冠が得意としている戦法の研究に膨大な時間を費やしているのではないかといいます。
去年10月、伊藤七段が、藤井八冠が持つタイトルに初めて挑戦したときの対局をAIで数値化したものを見ると、40手ごろ、藤井八冠に形勢が傾くと、そこから一気に押し切られています。しかし、31日の対局では、形勢が互角の期間が遥かに長くなっています。伊藤七段が見せた進化です。
タイトルが決する叡王戦最終局は、来月20日に行われます。
伊藤匠七段:「次局も、非常に注目していただける舞台だと思うので、熱戦をお見せできるように頑張りたいと思います」
藤井聡太八冠:「(きょうの)勝利がなければ、最終局はなかった。全力を尽くして悔いのないように戦いたいと思います。本日はありがとうございました」
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