会計検査院=東京都千代田区で、柴沼均撮影

 漁船の導入費用を助成する水産庁の「競争力強化漁船導入緊急支援事業」で、漁業者から導入効果として報告された「漁業所得」に漁業以外の収入が含まれていたケースが6割超に上ることが、会計検査院の抽出調査で判明した。検査院は29日、漁業者の目標達成度など事業効果を評価できない状況に陥っているとして、水産庁に関係団体などへの周知徹底を求めた。問題のあったケースの助成総額は73億円に上るという。

 この事業は、水産庁がNPO法人水産業・漁村活性化推進機構を通して各地の漁業協同組合連合会など関係団体に漁船の導入費用を半額補助したうえで、関係団体が漁業者に漁船をリースする仕組み。「漁業所得」などの報告を漁業者に義務付け、事業評価委員会が導入効果を確認する。

 2016~21年に57の関係団体が助成を受けており、検査院はこのうち19団体から漁船をリースされた個人経営の725漁業者を調べた。その結果、459件(助成総額73億9405万円)の報告で、漁港工事の警戒業務や海底清掃、各種補助金といった漁業以外の収入が「漁業所得」に含まれていた。

 さらに、漁船のリース開始1~2年目の報告と実態とが照合可能な77漁業者を詳しく調べたところ、報告では2年連続で黒字を達成していた75業者のうち14業者が実際は赤字だったことが発覚。また、46業者が事業目標の漁業所得10%増を達成したとしていたが、うち9業者は2年連続で未達成だったことも分かった。

 検査院は「問い合わせがなければ説明しないという国側の姿勢によって勘違いを招いた。実態が分からなければ事業の評価をしようがない」と指摘。水産庁は「機構への指導によって事業が適切に実施されるよう努める」とコメントした。【渡辺暢】

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