旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制されたとして被害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は29日、原告側と国側双方の意見を聞く弁論を開いた。国側は不法行為から20年が経過しているとして「賠償請求権は消滅している」と主張。原告の被害者側は「国の免責は許されない」と反論して結審した。
大法廷は今夏にも、旧法の違憲性や、国の賠償責任の有無について統一判断を示す見通し。判決期日は後日指定される。
上告審で審理の対象になっているのは、札幌、仙台、東京、大阪(2件)の各高裁で出た5件の判決。いずれも旧法が憲法に反していたと認めた。
ただ、仙台高裁判決は、手術から提訴まで20年以上が経過しているとし、不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」を適用して国の責任を否定。残りの4件は適用を制限して国に賠償を命じ、判断は分かれている。
国側は弁論で、除斥期間は被害者の認識を問わずに損害賠償請求権の存続期間を画一的に定めたものだと指摘した。適用制限が認められるのは、加害者の不法行為によって被害者が賠償請求できなくなったような極めて例外的な場合に限られるが、今回はそうした事情がないと主張した。
一方の被害者側は、国が旧法により障害者らを「不良な子孫を残す」との烙印(らくいん)を押したとし、根強い社会的な差別や偏見の中で提訴は到底できなかったと言及。国が免責されるなら人権侵害の繰り返しに他ならないと訴えた。
16歳の時に手術を受け、仙台高裁で敗訴した飯塚淳子さん(70代・活動名)は「幸せな結婚や子どもというささやかな夢を全て奪われ、人生は狂わされた。最高裁が最後の希望です」と意見陳述した。
法廷には多くの障害者が傍聴に訪れた。被害者側の事前の要望に基づいて、被害者側が手配した手話通訳者が法廷内に配置されたほか、大型モニター計6台に被害者側と国側の主張内容が映された。【巽賢司】
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