西大分地区の発着場近くで実施されたホーバークラフト(手前)の訓練の様子=大分市で2024年2月27日午後0時58分、石井尚撮影

 大分空港(国東市)と大分市中心部を海上ルートで結ぶ海上ルートに、水陸両用船の「ホーバークラフト」が2024年秋にも就航する予定だ。空港までのアクセス時間が大幅に短縮される一方、同じルートを運行していた運営企業が利用客の減少などで09年に撤退した過去もある。ホーバークラフトに未来はあるのか。海上輸送システムに詳しい広島大大学院の安川宏紀教授(船舶海洋工学)に尋ねた。【聞き手・森永亨】

 ――大分でのホーバークラフト就航をどう見ていますか。

 ◆正直、驚きでした。これだけ円安が進み、エネルギー価格が高騰している中で大丈夫だろうか、と。高速性がほしかったのでしょうが、ホーバークラフトは燃費が悪い船で、思い切った決断だと思いました。

 ――運航再開は15年ぶりになります。なぜホーバークラフトは日本で使われなくなったのですか。

 ◆コストが一番の問題です。乗り物は一般的に、遅く走る方が燃費が良くなります。ホーバークラフトは高速船の中でも高速で航行し、かつ浮揚するためのエネルギーも必要なので燃費は悪くなります。ただ、高くても早く着きたいという客のニーズが十分にあれば、商売として成立します。

 ――ホーバークラフトの利点を教えてください。

安川宏紀・広島大大学院教授=本人提供

 ◆軍事用や災害支援などでは唯一無二の存在です。一般的な船では難しい砂浜や海岸線にも上がっていけますし、陸上の走行も可能だからです。水の抵抗がないため、波風がなければ圧倒的なスピードが出ます。

 ――23年11月から始まった操縦士の訓練中には、接触事故も起きています。安全性に問題はないのでしょうか。

 ◆操縦の難しさは普通の船よりも若干はありますが、安全性が損なわれるほどではありません。事故があったのは、訓練不足が大きいと思います。

 空中でプロペラが回っているため風の影響を受けやすく、波が高いと浮くための空気が漏れるため波にも弱いですが、航路は湾内であるため波が低く運航に大きな影響はない、と運営会社も判断したのでしょう。

 ――運行再開に期待の声も高まっています。

 ◆僕は造船や船に興味があり、運航は個人的にはうれしく思います。半面、どこまで運営が持つのだろうという気持ちも正直あります。県が後ろについてくれるので、運航会社も採算が取れると判断したのだと思います。ホーバークラフトを目当てにした観光客の増加も見込んでいるということなので、ぜひともそうなってほしいと願っています。

やすかわ・ひろのり

 1959年、福岡県生まれ。九州大大学院工学研究科造船学専攻博士課程修了(工学博士)。84年に三菱重工業長崎研究所に入所。2002年に広島大大学院工学研究科助教授、03年から同教授、24年からは同大学院先進理工系科学研究科共同研究講座教授。専門は船舶海洋工学。

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