沖縄タイムス社が、戦後まもない時期に初めて住民の目線で記録した戦記として1950年に出版(初版は朝日新聞社刊)し、以来10版3刷を重ねてきた「沖縄戦記 鉄の暴風」が、筑摩書房(東京)から「ちくま学芸文庫」として出版される。沖縄戦体験の貴重な記録として読み継がれてきたロングセラーが、戦後80年を前に、全国の書店に流通することになる。
ちくま学芸文庫版「鉄の暴風」誤記を修正し、必要に応じて編注を付けた他、沖縄国際大学名誉教授の石原昌家氏による解説も掲載した。1760円(税込み)、528ページ。
県内の書店では6月中旬ごろ発売される。筑摩書房の編集担当者、藤岡泰介さんは「日本が外国と戦争したことを想像すらできない世代が増え、反比例して戦争体験者は減っている。二度と戦争をしない・させないために、ひとたび戦争が起こればどうなるのかをありありと伝えるこの名著を多くの読者に届けたいと文庫化を企画した」という。
沖縄タイムス社の武富和彦社長は「沖縄タイムスの魂であり原点である『鉄の暴風』は、戦場になればたくさんの住民が犠牲になることを伝えている。戦争は遠い過去の出来事ではない。再び軍事化が進んでいる沖縄から全国に向けて発信する意義を重視した」と話した。
同書は沖縄タイムス社の豊平良顕常務(当時)が監修し、記者の牧港篤三氏と太田良博氏(いずれも故人)が、住民への聞き取りや集めた手記を編集して執筆。米軍占領下の1950年8月、朝日新聞社に依頼して出版した。戦後の混乱の中、全体像を知り得ない時代に、沖縄戦の戦場で何が起こっていたか、住民の体験を記録した本は発行2カ月で7千部販売されるなど大きな反響を呼んだ。
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