三重県四日市市が、全国的に有名な「松阪牛(まつさかうし)」をふるさと納税の返礼品としていることに、ブランド名発祥の松阪市など生産区域の8市町が疑義を呈している。ルール上問題はなかったが、四日市市の森智広市長は21日の定例記者会見で「(県内の)自治体間の対立は本意ではない」として、返礼品から取り下げることを明らかにした。
対象の返礼品は、四日市市の事業者が市内の牧場で生まれ育った子牛を松阪牛の生産区域に定められている明和町の自社牧場に移して肥育したものを提供。市は返礼品の地場産品基準の一つ「当該地方団体の区域内で生産されたもの」に合うことを県、国に確認した上で、昨年11月下旬からポータルサイトに掲載していた。
これに対し、8自治体は生産区域の肥育農家らが築いてきたブランドを守りたいという思いから、4月上旬国に地場産品基準の見直しを求める要望書を提出した。
森市長は今月中旬に騒動が発覚後、事業者から辞退の申し出があったことに加え、生産区域の農家の声を代弁する形で松阪市の竹上真人市長から直接相談を受けたことを明かし、「これ以上の自治体間対立は好ましくないため、対応させていただくと答えた」と、取り下げに至った経緯を説明した。
一方、市はふるさと納税の「赤字」解消に向け、森市長の大号令の下、1年前から返礼品の新規開拓に躍起になっている。今回の松阪牛もその流れの中で発掘されたが、半年で取りやめに。この間の寄付件数は33件、寄付額は60万円だった。返礼品のポータルサイトには同じ事業者の近江牛も掲載されていたが、同様に取り下げられた。
また、四日市市の森市長の発言について、松阪市の担当課は「内容が入っていない」と話すにとどめた。竹上市長が22日に予定されている定例会見で何らかの発言をすると見られる。【松本宣良、下村恵美】
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