国会議事堂=川田雅浩撮影

 婚姻中の父母に認められている共同親権を離婚後も可能とする改正民法が17日、参院本会議で賛成多数により可決、成立した。離婚後の共同親権の導入は1898年の明治民法の施行以降初めてで、1947年の民法改正で定められた離婚後の単独親権が77年ぶりに見直される。公布から2年以内に施行される。

 親権は、未成年の子に対して親が持つ権利と義務。現行民法は、婚姻中は父母が共同で行使するとし、離婚後は父母のどちらか一方の単独親権と定めている。

 改正法は、父母が離婚する際に単独親権か共同親権かを協議し、意見が折り合わなければ家裁が「子の利益」の観点から親権者を判断する。

 一方の親による家庭内暴力(DV)や虐待の恐れがあり、父母が共同して親権を行うことが困難と認められれば、家裁は必ず父母どちらかの単独親権とする。父母の合意がない場合でも、家裁が子の利益にかなうと判断した場合は、共同親権とされることもある。

 改正法は、子に対する父母の責務を明確化し、父母は子の人格を尊重して子を養育しなければならないとした。また、婚姻の有無にかかわらず、父母は子の利益のため、互いに人格を尊重し、協力する義務があることを明記した。

 これまで解釈に委ねられていた親権行使のルールも定めた。婚姻中も離婚後も共同親権下では、子に関する決定を父母が共同して行うとしつつ、子に関する「日常の行為」や、父母の協議や家裁の判断を待つと子が不利益を受ける「急迫の事情がある」場合には、父母一方が単独で親権を行使できるとした。

 離婚後の養育費の着実な支払いにつなげるため、改正法では、養育費の請求に特権を与えて、支払い義務がある親に、他の債権者に優先して養育費を支払わせる仕組みが整備された。養育費に関する合意や協議がなくても、子を養育する親が、子の最低限度の生活に必要な一定額を請求できる「法定養育費」制度も新設した。

 離婚や別居で別居親と子の交流が滞ると、親子関係に摩擦が生まれることもあるとの指摘を踏まえ、調停や審判の手続き中に、家裁が試行的な親子交流の実施を促すことができる規定も設けた。【三上健太郎】

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