METオーケストラを指揮するネゼ=セガン=2月1日、カーネギーホール©Chris Lee

ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(通称:MET、メト)を支えるMETオーケストラ(メトロポリタン歌劇場管弦楽団)と音楽監督ヤニック・ネゼ=セガンが6月、13年ぶりの来日公演を行う。人気歌手エリーナ・ガランチャ、クリスチャン・ヴァン・ホーン、リセット・オロペサが帯同することも大きな話題。日本のマスコミ関係者とオンラインでインタビューを行ったネゼ=セガンは「METが提供できる最高のものをお届けすることを約束します」と話す。

あらゆる色彩のパレット

メトロポリタン歌劇場音楽監督のネゼ=セガン© George Etheredge

ネゼ=セガンは1975年、カナダ・モントリオール生まれ。ケベック音楽院でピアノと室内楽を学び、ロッテルダム・フィルの音楽監督、ロンドン・フィルの首席客演指揮者などを務めた。2009年、METデビュー。18年シーズンの開幕とともに音楽監督に就任した。また、2000年からモントリオール・メトロポリタン管芸術監督兼首席指揮者、12年よりフィラデルフィア管音楽監督も務めている。

エリーナ・ガランチャ(メゾソプラノ)©Christoph Köstlin

METオーケストラは今回、2つのプログラムを持ってくる。Aプログラムはワーグナーのオペラ「さまよえるオランダ人」序曲、ドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」組曲、後半にバルトークのオペラ「青ひげ公の城」。

ネゼ=セガンは「『青ひげ公の城』は短い上演時間に展開する、登場人物が少ないオペラですが、ドラマチックなあらゆる色彩のパレットの表現が要求される作品です。そして、私たちの2人の素晴らしいソリストであるガランチャとホーンをフィーチャーします。バルトークはワーグナーの影響をいろいろと受けていると思います。特に『さまよえるオランダ人』に影響を受けたと思います。ですから『さまよえるオランダ人』の序曲は、『青ひげ公の城』といい組み合わせになったと思います。『ペレアスとメリザンド』は私の好きなオペラの一つであり、偉大な指揮者であるエーリヒ・ラインスドルフが何十年も前に作成したこの組曲は、ミステリアスな物語をよく語っています。バルトークへの準備としてうまく機能すると思います」と話す。

クリスチャン・ヴァン・ホーン(バスバリトン)©Simon Pauly

マーラーの矛盾と混乱

リセット・オロペサ(ソプラノ)©Steven Harris

プログラムBはモンゴメリー「すべての人のための賛歌」(日本初演)、モーツァルト「私は行きます、でもどこへ」「ベレニーチェに」(ソプラノ:オロペサ)、そしてメインは人気の高いマーラーの交響曲第5番。

「METオーケストラはオペラのオーケストラですから、ブラームス、チャイコフスキー、ブルックナーなど交響曲の偉大な傑作を頻繁に演奏することはありません。だからこそ何か違うものをもたらすと感じています。私が音楽監督を務めるフィラデルフィア管弦楽団は、マーラーの交響曲第5番を毎シーズンと言っていいくらい頻繁に演奏します。しかしMETオーケストラの演奏には、まったく違うエネルギーがあります。日本の聴衆にとってオーケストラの質を目の当たりにすることができるのは、非常に興味深いことになると考えています。レナード・バーンスタインが60年代にマーラーを少し復活させたとき、その50年前よりも理解が深まったと思います。21世紀の今、私たちの世界はこの交響曲に実際に表れている矛盾と混乱をもって日常的に生きています。マーラーの交響曲は今日、これまで以上に私たちに語りかけていると考えます」と話す。

これまでと違う体験

また、アメリカの現代作曲家、モンゴメリーの「すべての人のための賛歌」が日本初演される。昨年のヨーロッパツアーでもアメリカ人作曲家の作品を持っていった。

「METは近年、新しい委嘱作品もたくさん手がけていますし、世界初演も数多く行っています。これは私にとっても、カンパニー全体にとってもオーケストラにとってもとても重要なことです。それがジェシー・モンゴメリーの作品を含めることにした理由です。彼女はアメリカの優れた若手作曲家の一人であり、今や世界的に知名度を高めています。昨年のヨーロッパ・ツアーでも聴衆は同時代のサウンドにコミットするMETオーケストラを目撃し、本当に楽しんでくれたと思います」

フィラデルフィア管とも来日しているネゼ=セガンは、「日本の聴衆は素晴らしいテイストを持っている」という。

「私たちMETの芸術的ビジョンを世界に発信することは非常に重要だと感じてます。特に日本のお客さまはおそらくクラシック音楽について最も知識があると思います。今回のプログラムは私の経験、オーケストラの経験、そして彼らが最も得意とするレパートリーと、何か新しいものをもたらすレパートリーが混ざり合っています。謹んで申し上げると、日本の皆さんが準備ができていないものだと考えています。つまりこれまでと何か違った経験になるということです」

兵庫公演が6月22日(土)、23日(日)、兵庫県立芸術文化センター。東京公演は6月25日(火)、26日(水)、27日(木)、サントリーホール。問い合わせは、<兵庫公演>芸術文化センターチケットオフィス(0798・68・0255)、<東京公演>クラシック事務局(0570・012・666)

(江原和雄)

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