現在放映中のドラマ『ブラックペアン シーズン2』で、アメリカ帰りのエリート医師・高階権太を演じる小泉孝太郎さん。シーズン1では、赴任した東城大病院で、伝統的な手術方法を重んじる天才外科医・渡海征司郎(演:二宮和也)と対立しながらも、最新の医療機器や技術を駆使して患者の命を救おうと奮闘する冷静で理論的なキャラクターを、洗練された演技によってリアルに表現。「僕は、高階の考えはすごく好きなんです」と、共通点も感じている。

舞台は6年後。今作では、知的でクールな高階が、渡海とは全く異なる“悪魔的”世界的外科医・天城雪彦と対峙する。「意識して変えていることはない」と、変わらないスタンスで、再び『ブラックペアン』の現場に立つ小泉さんに心境を聞いた。

キャスト再集結の安心感

——今回、高階先生を演じていて、シーズン1から変えられたことや、変化などはありますか?

特に意識して変えていることはないです。スナイプしかり、今回はエルカノやダーウィンなども出てきますが、そうした最新の医療機器を用いて人の命を救う高階は、天城先生とは医者としての信念は全く別で、対極な立場ですよね。天才外科医ではなくて凡人でも、最新医療機器を使えば人の命を救うし、それが普及したほうが患者さんのためで、医者も天才的な主義は必要ないっていう。高階がそういう未来を望んでいる。僕としては、そこを演じる上で何かを変える必要はないかなと思っています。

——キャスト陣も再集結されて、現場の雰囲気はいかがですか?

やはり信頼感がありますよね、安心感も含めて。それは大きいと思います。オペ室に入ったら、「多分僕はこういう動きなんだろうな… あとは細かいことは医療指導の先生に聞こう」とかもありますね。おそらくこういう展開になっていくだろうな、という動きが想像できるのは、やはりシーズン1をやっていた強みだと思います。

前作と違う作品の“艶っぽさ”

——そうした強みもある中で、視聴者にどのようなところを見てほしいですか?

圧倒的な脚本の素晴らしさですよね。ドラマは、どんな役者、監督であったとしても、脚本によってはすごくたるんでしまうと思うんです。『ブラックペアン』は、海堂(尊)先生の原作があって、脚本でも医療のエンターテイメントに仕上げている。その脚本の面白さは、前回だと渡海征司郎という天才心臓外科医の、ものすごい異分子的な存在を思いきり魅力的に描いていたと思いますし、僕らはどうやっても渡海には勝てなくて、振り回されて、医者としてのプライドもずたぼろにされたり。そこで人の命とは、みたいなことがあって。今回は今回で、天城という医師が東城大に入ってきて、渡海先生と瓜二つで、別人ではあるのですが、見ている方もきっと渡海に似てるなと頭の中では思いながらも、「なんで渡海じゃないんだろう」と思うわけじゃないですか。そこも見どころだと思います。

——そっくりながらも別人の渡海先生と天城先生の違いを、どう感じていらっしゃいますか?

「手術は芸術」とポスターにも書いてありますが、今回、芸術性や美しさもあって、すごく色っぽく感じますね。前回はどちらかと言うと、荒々しさや無骨な感じがする画やテイストだったと思うのですが、今回はどこか品格だったり、色気だったり、艶っぽさを感じる。多分見た方も、それがシーズン1とちょっと違うなと感じると思います。天城になって人物が違うからだとも思いますが、大きく作品の“香り”みたいなものは変わっていますよね。僕も放映を実際に見て、「あ、全然違うな」と思いました。

絶妙な芝居 「二宮くんは本当にすごい」

——二宮さんとの共演はいかがですか?

僕はシーズン1から変わらず、高階は天城先生とは違う信念を持っていて、そこで対峙することによって天城先生が光ると思っています。シーズン2でも、僕は負けていたほうがいいんです。高階の思うような未来はなかなか現実には来なくて、圧倒的な主義を持った先生を前にして、打ちのめされてしまうという。そこが本当にやっていても面白いし、やっぱりこれは二宮くんの作品だと僕は思うので、いかに二宮くんを生かせるかというのは考えて演じていますし、ドラマって主演あってのドラマだと思っているので。高階の作品ではない。自分の役目をそう理解しています。

——天城先生を演じる二宮さんについて、現場で新発見されたエピソードなどはありますか?

僕は二宮くんは本当に絶妙なお芝居をするなと思っていて。渡海は白いご飯を食べて、卵かけご飯が好きでしたよね。でも天城はご飯が嫌い。「俺はパン派だから」っていう。それを芝居で、全体を通してそう思わせるすごさというのは感じていますね。天城といえばやっぱりパンなんですよね。朝食もパンだろうな…とか、もしかしたらワインとクロワッサンとか、クロックムッシュも食べてそう、と思わせるのはすごいと思うんです。そこは絶妙ですよね。渡海はご飯だけど、天城はパンなんですよ、どう考えても。彼のセリフ回しから、手術での立ち居振る舞い、人に対する接し方、距離感。どう考えてもパンなんです(笑)。見てくれた方には分かっていただけると思います。それを芝居で表現している二宮くんが本当にすごいと思います。

高階との共通点 その時々で最善を尽くす

——高階は「必要ならルールを変える」というような指針を持っていると思いますが、小泉さんご自身が持っている自分のスタイルやこだわりがあれば教えてください。

こだわりというより、僕は逆にあまり言葉にとらわれないことを意識していますね。例えばですが、恋愛も仕事観も、僕ら人間はけっこう言葉にとらわれてしまうと動きづらくなってしまう。なのでニュートラルでどっちにでも動けたり、考え方もいろいろあるので、そこはすごく大事にしています。高階の考えは、僕はすごく好きなんです。必要ならばルールは変えるって、どの業種でも必要なことだと思うし、そこがものすごくニュートラルな人じゃないと、その発想って出ないと思うんですよね。高階は高階で野心はあっても、「自分のため」という野心ではなくて、多くの人の命を救うためには最新医療機器が必要で、そのためには自分も権力闘争しなければいけない。偉くならなければ多くの意思決定はできないので。

——そうした高階の姿勢に、共通点も感じていらっしゃいますか?

高階と共通している部分だなと思うのは、難しいですが、その時のベストを尽くす、最善を尽くす、と。その「最善」というのも、時代や年月とともに変わってくるじゃないですか。過去にとらわれるのでもなく、未来を生きるのでもなく、今を生きる。だから、今を生きている高階がすごく好きです。そういう意味では、僕も今を生きるということは意識しているかもしれないですね。きっと人間は過去を引きずったり追いかけようとしたり、はたまた未来にも、「いつかこうなるんだ」みたいに夢を見たり。そうではなくて、「今」なんですよね。あまり言葉を意識してしまうと、過去とか未来を生きることになってしまうので。今を生きるために、言葉にとらわれすぎない。ずっと何かにがんじがらめにされちゃうと、身動きも取れないですしね。

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