定職につかない、いわゆる「ダメ男」と交際中の会社員、白石郁子(堀田茜)。30歳を前に将来に不安を覚え、婚活を始めるが―。ドラマ「好きなオトコと別れたい」(テレビ東京、水曜深夜0時半~)で愛すべきダメ男、浩次を演じるのが俳優の毎熊克哉だ。大河ドラマ「光る君へ」で、どこかはかなげな義賊・直秀を演じ人気を博したが、今回は真逆といってもいいキャラクター。ノリが軽くて、でも、どこか憎めない34歳無職を演じる。「こんなに人に甘えられて、許されて、好かれるということには、なんだか憧れを感じました」と明かす。
「ハートフルな作品」
藤緒あいさんの同名漫画が原作のラブコメディー。「好きなオトコと別れたい」というインパクトのあるタイトルだが、「好きなんだろうなあって思いました。人間ってわかっちゃいるけれどやめられないみたいなことは多い気がして。『別れたい』って欲望になっている時点で、すごく(相手のことを)好きなんでしょうね」。
2年前に飲み屋で出会い、「気づいたら付き合っていた」という2人だが、浩次は、34歳にもなって仕事が長続きしない。郁子からは、交際相手に金銭的に依存する「ヒモ男」呼ばわりされるものの、疲れて帰ってくる郁子のために好物のつまみを買っておいたり、料理を作ろうとしたり、その愛情は本物だ。「浩次っていいやつなんですが、何考えているか読めないところもある。自分を大事にできないし、人任せ。だからこそやさしくて、いいところと悪いところが一緒に存在している。ただ、いちばん重要なところって、自分を犠牲にしても郁子を本当に大事にしているところ。役作りではないかもしれないですが、撮影現場では、一緒にいる人を観察して、もっと好きになってということを念頭に置いて演じていました」
郁子は、同僚の青山からも思いを寄せられるが、浩次のペースに乗せられ、「別れたくても別れられない」というループにはまってしまう。2人の掛け合いや恋人同士の何気ない日常の空気感は作品の魅力だという。「郁子とのシーンでは、キャッキャしているだけなんですけれど、出来上がったものを見ると愛らしい。大きな出来事もなくて、キャラクターそれぞれに愛らしさがあるハートフルな作品になっています。これを見て損をする人はいないだろうと思える。すごく爽やかでやさしい物語」とほほ笑む。
大河で「直秀ロス」
話題作への出演が続き、近年、俳優としての注目されている。昨年はドラマ「セクシー田中さん」(日本テレビ)で、昭和の価値観にとらわれたサラリーマンが成長していく姿を好演。今年は、大河ドラマ「光る君へ」で、義賊の直秀を演じ、影のある演技と印象的なせりふ回しで注目を集めた。第9回で非業の死を遂げるとインターネット上では、「直秀ロス」という言葉も生まれたほどだ。
「見ている人の数に圧倒されました。大河ドラマという日本独特の作品じゃないと、ここまでの反響はなかったんじゃないかな」と冷静だ。
義賊から、今作での愛されるダメ男と、演じる役も幅広い。「いろいろな作品と役がありますが、自分がどう挑むかで変わる。隠し味的にやったことや、もしくは考えずにやったことが、うっすらとでも(演技を通して)伝わってるときがいちばんおもしろいですね」と語る。
これからの活躍が期待されるが、「すごくあまのじゃくなところがあって。大河ドラマやテレビといった、人がいっぱい見るようなもので知ってもらえたんだったら、今度は真逆をやりたい。例えば、小劇場の舞台や誰が見に来るんだろうみたいな映画とか。見る人が少なくても違う面白さがある気がしています。同じ方向にずっと進み続けるよりは、こう行ったら逆に行ってみよう、とかを繰り返して行きたいかな」。(油原聡子)
毎熊克哉
まいぐま・かつや 昭和62年生まれ、広島県出身。映画『ケンとカズ』に主演し、数々の映画賞を受賞。印象的なまなざしとやさしい声色が魅力で、ドラマ・映画・舞台・ナレーションなどで幅広く活躍。
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