「配信バブル」はいつまで続くか?(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

昨今Netflixなどの動画配信サービスの台頭に伴い、日本のアニメ産業が海外収益を伸ばしている。そうした追い風を受けている影響として、アニメの「連続2クール放送」に代表される、放送・配信手法の新たな流れを前編で解説した。では、このような日本アニメ産業の成長や、国内外で人気がある状態はこれからも続くのだろうか?

思い起こされるのが、2000年代中盤のアニメバブルの隆盛と衰退である。当時も日本アニメの人気が急速に高まり海外展開がブームになったものの、そこから定着せず、10年代にかけて市場が縮小していった。

同様に、昨今の動画配信サービスに伴う成長が“配信バブル”となる恐れはないだろうか。アニメ産業レポートによると、21~22年の成長率は21年以前と比べて鈍化しており、ドル建てでは減少していると述べられている。また配信事業者の拡大競争・作品獲得競争が一段落したともいわれており、これまでのような成長が続く保証はない。

ただ、00年代当時と異なるプラス要素がある。

かつてのアニメブームとの決定的な違い

その一つが販売先の配信事業者がグローバルでビジネスを行っていること、もう一つが映像や原作の権利を持つ日本の事業者自身が、現地事業者と直接ビジネスを行えるようになった点である。

00年代以前は映像の販売先が国・地域ごとに分かれており、仲介となる事業者のカバー範囲も限られていた。また日本の事業者側にもビジネスに関するノウハウがなく、仲介業者が日本の事業者の許可なく横流しすることが横行していたが、それを監視・抑止することも難しかった。

その一例が『キャプテン翼』である。同作は日本のサッカー人気を定着させるきっかけとなり、また欧州や南米のスター選手にもファンがいるほど広い地域で視聴されていたが、相当な量の横流しや海賊版が存在したと考えられる。またこうした悪質な行為について正確な実態をつかめず、当然日本企業へ十分な対価は入らなかった。

先述したように、現在はそれらの課題が改善されている。配信事業者と契約を行えばその事業者がビジネスを行う地域全体に効力が及ぶため、広範囲への映像展開が可能となる。

日本のIPビジネスにおける進化

また、集英社や講談社らアニメ原作コミックを持つ出版社が紙・電子の両面でビジネスを強化しており、作品タイトルの人気向上に映像・原作コミック両面から取り組めるようになった。

東宝も国際展開に本腰を入れ始めている。子会社であるToho Internationalから米国市場に配給した『ゴジラ-1.0』はアカデミー賞視覚効果賞を受賞。23年には国際部の事業を分社化する形でTOHO Globalを設立し、海外展開を強化し始めている。

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