秋田県横手市に木の温もりが感じられる木工品作りに取り組んでいる企業があります。受け継がれてきた伝統の技と新しい技術で、全国にものづくりの魅力を発信している職人たちの思いを紹介します。

木の温もりが感じられる建具や組子細工。手がけているのは、横手市大雄にある創業55年の「小松木工」です。

2代目社長の小松俊晴さん(50)は、高校を卒業後、千葉県の木工所で4年間修業を積み、23歳で地元の横手市に戻ってきました。そして、小松木工の従業員として経験を重ね、創業者である父・小松俊悦さんが会長に就任した2018年に家業を継ぎました。

小松さんは「継ぐというよりも父と同じ仕事がしたかった。(父は)ものづくりに関しては本当にこだわりがある。『悪いものは絶対出せない』というのが父の信念だった。そういったところを見ていると、良い製品、きれいな製品を届けたいという思いが強かった」と話します。

小松木工では、主に公共施設などで使う木工品の製作や取り付け工事を行っています。

秋田市の国際教養大学では、図書館の本棚や机などを製作。同じく秋田市のあきた芸術劇場ミルハスでは、装飾に組子細工をふんだんに取り入れるなど、その美しい作品の数々が高く評価されています。

県外からの受注も多く、生産能力の向上と効率化を図るため、2018年から最新の加工機械を導入しています。

できる部分は分業にして、極力機械でできるような環境をつくったという小松さん。「例えば、昔の職人しかできないことが機械でできる。早さの面でも機械のほうが全然早いので、若い社員が10年くらい経験したベテランの職人と同じくらいの仕事ができるとか、それぐらい機械化が進んでいる」と言います。

43人の従業員(2024年11月時点)がいる小松木工では、10代から70代まで幅広い年代の人たちが活躍しています。地元出身の柴田柊平さん(23)は、入社2年目にして家具のパーツ加工などを任されています。

柴田さんは「責任ある仕事がいっぱいで、失敗もしているがすごく助けられていると毎日感じている。製品が完成したときに『ちゃんと形になったな』とか、現場に納められたとき、きれいに製品が納まったときにやりがいを感じる」と話します。

ベテランの職人も若手に期待を寄せています。

入社25年目の若松信吾さん(64)は「何でも製品をよりきれいに作ることがモットー。若い力を借りて作っている」と言います。

小松木工では、創業時から力を入れていることがあります。それは組子細工の製作と継承です。

小松さんの父・俊悦さんは、長年培ってきた組子細工作りの高い技術が評価され、2015年に「現代の名工」に選ばれました。会長になった現在は、地元の子どもたちに組子細工の文化を伝えています。

これまで組子細工の製作は、全て職人の手仕事によるものでしたが、今は組み立て以外の工程を機械で行い、新たな製品づくりにも挑戦しています。

小松木工・小松俊晴さん:
「組子細工という伝統工芸の中でやっていかないといけないのは分かるが、形を変えて今の生活様式に合うものにしていくのが大事だと思うので、そういった取り組みはしていかなければいけない」

時代とともに形を変えながら、木とともに歩んできた55年。

小松木工が目指す先について小松さんは「この業界で一番になりたい。一番にならないと、いろんなことを変えていけない。賃金であったり、労働環境、そういうことを考えていくと、一番になっていろんなことをみんなに提案したい。幸い、家具は完成品でどこへでも持っていけるので、横手であっても競争力でいくと不利ではないと思う」と語ります。

これからも木の温もりを大切にした製品を、横手市から発信していきます。

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