特集は、注目の宿泊施設です。長野市権堂町のアーケードの近くに、11月、レトロな雰囲気のホテルがオープンしました。今、全国で増えつつある「無人」のホテルです。なぜ、繁華街・権堂なのか。経営者に、開業の経緯や狙いを聞きました。
■かつての旅館を改装しホテルに
電子錠のドアを開けて、入った先は、ふかふかのベッドが置かれた和室。
宿泊客:
「日本的でよろしいのではないでしょうか。木の温もりがありますし」
こちらはホテルの「客室」です。
場所は長野市の繁華街・権堂町。アーケードの中程から狭い路地を進むと路地裏に古い2階建ての建物が見えてきました。
11月2日にオープンした「宿屋 GONDO aioi」です。
建物は築約60年。5年ほど前から空き家になっていたかつての旅館を改装しました。
■市の活性化事業に参加し開業
開業したのは2人の男性でそのうちの一人が新潟県・上越市出身の笹川亮さん(46)。
宿屋 GONDO aioi・笹川亮さん:
「会社員勤めをしていたんですが、どこかで自分でいつか起業できればということを考えていて今回、権堂のアーケードホテルプロジェクトに参加させていただいて、そこで知り合った皆さんと一緒に協働しながらこちらを立ち上げました」
笹川さんと共同代表の柘植崇志さんは県外の「起業希望者」を受け入れる長野市の事業に応募し「権堂」を活性化させるプロジェクトに参加しました。
■繁華街に新たな人の流れを
かつて県内随一の繁華街として栄えた権堂。長野オリンピック以降の景気低迷や2020年からのコロナ禍が追い打ちとなり人通りも、営業する店も減りました。
その一方で、マンション建設などの再開発も進んでいます。
そうした中、2人は合同会社を立ち上げ新たな人の流れをつくろうと、ホテルの運営に乗り出したのです。
宿屋 GONDO aioi・笹川亮さん:
「お店が閉じていったり、空いてるお店がある。寂しい気持ちはあるんですが、今回、われわれが一つのきっかけとなり、住民や商店街の方の役に立てればという思いはさらに強くなった」
■レトロなホテルを無人運営で
早速、ホテルを案内してもらいました。
宿屋 GONDO aioi・笹川亮さん:
「ここでタブレットでチェックインのお手続きをしてもらう」
ホテルは、人手不足を背景に今、全国で増えつつある無人運営。入り口のタブレット端末でチェックインの手続きをして、中へ入ります。
宿屋 GONDO aioi・笹川亮さん:
「ラウンジスペースということで、宿泊者の方が自由に使えるスペースになっております」
1階には共用のラウンジとキッチンがあります。レトロな雰囲気を味わってもらおうと、ガラス窓やキッチンのシンクはそのまま利用しています。
宿屋 GONDO aioi・笹川亮さん:
「ガラス、これも当時のままをいかして。玄関の引き戸もそうですが、今ではなかなか用意できるものではないので。昭和レトロという言葉が一つキーワードにはなると思いますし、外観とか雰囲気はできる限り残したいと」
天井や柱、階段も基本的にはそのままです。
■電気錠付きの「じいちゃん家」
部屋は、ベッドを置いた2人部屋の和室が6部屋、2段ベッドを2つ置いた4人部屋の洋室が2部屋あります。ほぼ素泊まりなので料金はリーズナブルです。
宿屋 GONDO aioi・笹川亮さん:
「昔小さい頃、じいちゃん家、ばあちゃん家来ていたよねみたいな、懐かしい気持ちになってもらえればありがたいなと思いますけどね」
昭和レトロではありますが、9台の防犯カメラを設置し各部屋のドアには電子錠が付いていてセキュリティ対策はばっちりです。
後日、実際の宿泊客を取材させてもらいました。
タブレットでチェックインを済ませたのは、静岡県沼津市の小川さん夫婦。車で福井、長野、群馬を巡る4泊5日の旅行中でした。予約した決め手は善光寺に近いことと、料金の安さだそうです。
電子錠に少々苦戦。記者が手伝って入室しました。
予約したのは2人部屋の和室。落ち着いた雰囲気に2人はー
静岡・沼津市から・小川信義さん(72):
「造りが和室みたいで、木の造りで落ち着きますかね」
妻・小川敏子さん(69):
「木の感じがいいですよね、昔風な家にいる感じで」
■ホテル名は地域のシンボルから
20代の頃、上越から度々、権堂に訪れていたという笹川さん。ホテルの名前に使った「aioi」は地域のシンボルともいえる映画館の「相生座」にあやかっています。街の様子は寂しくはなりましたが、魅力は十分あると感じています。
宿屋 GONDO aioi・笹川亮さん:
「昭和レトロな建物はそのまま。これは昔も今も変わってなくて、逆に他ではなかなか見られない建物だと思いますけどね。1店舗1店舗が癖が強いというか、それはすごくいい意味だと思います。お店を運営している人たちもすごく温かみのある、そういう方たちが多いので」
■商店街店主も歓迎
ホテルのオープンを権堂の店主たちは歓迎しています。
手打ちそば処 とがくし・中川麻子さん:
「もー、大歓迎ですね。私もね、55年やってるんですよ。だけど今、人があまりいないでしょ。だからそういうものはどんどんできてもらって、出入りしてもらった方がいいわけ」
珈琲専科 ブラジル・関川美穂子さん:
「うちモーニングをやっているので朝、来ていただけたりしたら、うちのお店としたら盛り上がります。いい方向に進んでいただければと思います」
■商店街全体でお出迎えできたら
「相生」という言葉には「一緒に生育する」という意味があります。
笹川さんたちは、今後も同様のホテルを増やし商店とも連携しながら商店街全体で多くの客を迎えたい考えです。
宿屋 GONDO aioi・笹川亮さん:
「いろんな造りのホテルがこの商店街だと実現できると思うので、できれば少しずつでも魅力あふれる宿泊所を増やしていきたい。連携を図りながらお互いにお客さんが行き来できるような形で、商店街全体でお客さんをお出迎えできるような流れがつくれればいいのかな」
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