国民民主党が求めているガソリン税を軽減する「トリガー条項」の凍結解除。
現状を取材すると長引くガソリン代の高騰で疲弊する運送会社と「トリガー条項」の課題が見えてきました。
12日午後行われた自民党・公明党・国民民主党、3党の政策会議。議題の一つとなったのがガソリン税の減税です。
■日頃のガソリン代に街の声は…「ちょっと高すぎるかな」
ガソリンスタンドを取材すると…
【記者リポート】「大阪市内のガソリンスタンドです、こちらでは今レギュラーガソリン1リットルあたり175円、このぐらいの価格が2年ほど続いているということです」
今月5日時点で全国のレギュラーガソリンの平均小売価格は174.5円と4年前よりもおよそ40円高くなっています。
【利用客】「ちょっと高すぎるかなと思います、なるべく安いところに行こうとはするんですけど」
【利用客】「どうしても日常使うものなので、ガソリンは、仕事でも個人でも。もう少し安く、協議してもらえると助かります」
【旭油業NEXT 豊田浩さん】「燃料売っているだけでは成り立たないので、車検をお受けしたり、洗車をお受けしたり、油以外の収益を上げることによって、お客さまに競争力のある価格を提供できるのではないかと」
■ガソリン税軽減する「トリガー条項」 凍結解除は実現するのか?
家計にも影響が大きいガソリン価格。そのガソリンにかかっている税を軽減するために今、議論されているのが、「トリガー条項」の凍結解除です。
「トリガー条項」とは、全国の平均小売価格が3か月連続で160円を超えた場合、ガソリン税のうち25.1円を免除し、ガソリン価格が下がる措置のこと。
しかし、2011年の東日本大震災で復興財源を確保するため、トリガー条項の発動は”凍結”され、政府はその代わりに価格を抑える補助金で価格を抑えています。
国民民主党は「トリガー条項」の凍結解除を求めていて、11日「newsランナー」に玉木代表が出演した際も…
【国民民主党・玉木雄一郎代表】「50年前の古いゾンビのような税制を改めて、新しい時代に適用したもの、インフレ時代に適用したものに変えていこうというのが私たちの主張なので、上2つ(103万円の壁撤廃、ガソリン税引き下げ)は、年末の税制改正、今月が山だと思いますが、そこで果実を取りたいと思います」
■燃料費がかさむ運送会社「賃金アップ」を期待
この動きを運送会社はどう受け止めているのでしょうか。
大阪府にある運送会社は、大型トラックなどで大阪から九州や関東までの往復、700~800キロの距離で荷物を運んでいます。
【ドライバー 青山翼さん】「(Q一回の輸送でかかる燃料コストはどれぐらい?)5万円ぐらいですかね」
長距離輸送がメインのためかさむ燃料費。5年前に、すべての経費のうちおよそ15パーセントだった燃料費は、価格高騰で今や20パーセントを占めるまでになっています。 「トリガー条項」の凍結解除にどんな期待をしているのでしょうか?
【ドライバー 青山翼さん】「まあ賃金アップですかね。やっぱり賃金アップしていただいて、みんなが『運送会社で働きたい』と夢というか、希望を持ってもらえるような会社になってほしい」
この会社の社長も…。
【トーワカーゴ 岡村成晃社長】「(解除なら)ありがたいですね。単純にこの一言に尽きます」
トリガー条項の凍結解除に期待はしていますが、一方で懸念もあるといいます。
【トーワカーゴ 岡村成晃社長】「(凍結解除されれば)お客様からやはり運賃の値下げの要請はあるかなと思います。他のものがいっぱい、トラック本体も上がっていますし、この辺をどういう風に吸収していくかが鍵かなと」
■いちご農家 重油は「いちごのために30万円~40万円使用」
さらに、取材を進めると「トリガー条項」に対し不安な気持ちを抱く人たちも…。
【市川農場 市川健治社長】「少し実ができてきて、もう2週間~3週間ぐらいしたら、イチゴの収穫がはじまる大切な時期になりますね」
滋賀県豊郷町にあるいちご農家では、糖度の高さにこだわった「章姫」という品種のいちごを栽培しています。冬だと1,2度まで下がるため、農業用ハウス内を温める重油が欠かせませんが、価格はかなり高騰しているといいます。
【市川農場 市川健治社長】「寒いといちごもびっくりするので、じわじわ寒さにあたるような環境づくりが大事ですので、30万円~40万円ぐらい(重油を)使用します。ただそれが上がっていますので、今シーズンは1.2~1.3倍になるか」
■重油・灯油が「トリガー条項」対象外に不安感じる農家
しかし実は、トリガー条項はガソリンと軽油は対象ですが、灯油や重油は対象外。凍結が解除されたらすでに出ている政府からの補助金はどうなるのか、不安を感じています。
【市川農場 市川健治社長】「一番使う重油・灯油が対象外とは、ついこの間知ったばかりで非常に衝撃を受けています。生産コストをいかに低減するかというのが使命ではあるとは思っているものの、限界を超えたものに関しては助けをいただけると、経営的にはいいかなと思います」
期待の声がある一方、課題も残る「トリガー条項」。政府は今後、どのような対応をとるべきでしょうか。
■トリガー条項の凍結解除メリット 『出口』『金額』『受益』がはっきりする
そもそもガソリンは本体価格の上に『石油石炭税』、『本来の税率』と『暫定税率』を足した『ガソリン税』、さらに消費税まで上乗せされています。
そして現在は本体価格を下げるために、石油元売り業者などに補助金を支給して価格を抑制しています。変動的ですが、およそ5円から42円値下げ。ただ、ここにはたくさんの税金が使われています。
そして、国民民主党が主張しているのが、トリガー条項の凍結解除。どういうものかというと、本体価格を下げるのではなく、『暫定税率』の25.1円の税金の徴収を一定期間やめましょう、それによって価格を下げましょうという話です。
補助金支給を続けるのではなく、トリガー条項を凍結解除するメリットは、どういうところにあるのでしょうか?
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】「『トリガー条項』にちなんで、3つの取り柄が(トリエガー)あると思います。『出口』、『金額』、『受益』がはっきりするということ。
補助金のもとでは、『出口』に関して言うと、補助金をいつ出すか、出すのをやめるかを決めずに導入してしまった。おととし1月から補助金は続いているんですが、7回にかけて延長されている。一方、『トリガー条項』はいつやめるかが、ガソリン価格に応じた基準があるので、明確になります。
『金額』に関しても、25.1円の『暫定税率』がなくなるということで市場に影響は与えますが、金額は固定されている。一方で補助金のもとでは、5円から42円までガソリン価格に応じて、値段自体も直接政府がコントロールするものなので、市場への影響が大きい。
最後の『受益』は、実際、補助金の場合は誰に補助金を出すか決めなきゃいけないですが、現状ではガソリンの元締め企業に払っている。これが減税になれば広く透明性の高い形で還元できるメリットがありますね」
■トリガー条項の凍結解除 実現可能性はどれくらい?
灯油と重油は対象外になっていますが、この手当はどうしたらいいですか?
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】「現状でも補助金が出ている項目になるので、今回、『トリガー条項』に含まれないものに関しては、臨機応変に補助金をという考え方もあると思います」
【関西テレビ 神崎博解説デスク】「財務省としては財源を失うことになるので、やりたくなかった。もともとトリガー条項自体は旧民主党の時代にできたもので、翌年の東日本大震災でストップしているので、これもやりたくなかった。これまで国民の玉木さんは何回もやろうと言ってきたけど、ずっとはねていた。
今回選挙で少数与党になったことで、国民が力を持っているので、これまでと違って実現可能性は高まっていると思いますね」
トリガー条項の凍結解除の実現に向けて、どう動いていくのか。注目されます。
(関西テレビ「newsランナー」2024 年11月12日放送)
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