ステーキのたれとして沖縄県内外で広く親しまれてきた「A1ソース」の販売が休止になる。ソースの粘度が低くなったためで、輸入を手がける湧川商会(浦添市)は要因が判明するまでは輸入を停止する方針だ。フレッシュプラザユニオンなどのスーパーは値下げしており、残り少ない商品を買い求める客の姿が見られた。(政経部・大川藍、村井規儀)
「これはA1じゃない」「全く別物」-。湧川商会には、A1ソースの愛用者から品質の変化を訴える意見が複数寄せられた。通常の商品はとろっとした粘りけがあり、冷蔵保管すると固まるため、振って使う必要があるほど。ところが直近の製品は「少し傾けただけでサラサラと出てくる」(湧川商会の仲松義光統括次長)まで粘度が低下していたという。
湧川商会が輸入元の英国・ブランズ社に問い合わせたものの、原因は不明。同商品は年間14万本売れる定番商品だが、品質に万全を期するため当面の輸入を停止した。製造・輸送などの工程を調査し、原因が判明するまで再開を見送る。
A1ソースは家庭用のほか、県内のステーキ店などで使用されており、販売休止を惜しむ声が上がる。沖縄ステーキ協会の仲本貴博会長は「県内外でネームバリューがあり、なくなれば物足りなさや寂しさを感じる客はいるだろう」と話した。
一方、近年は独自のたれを開発するステーキ店も増えている。仲本会長は「これを機に、自社商品の開発に取り組む店が出て、ステーキの楽しみ方が進化するのでは」と見据えた。
湧川商会は在庫を出し切っているため、スーパーの店頭から1カ月ほどでA1ソースの姿が消える可能性がある。交流サイト(SNS)上では「ウスターソースくらいサラサラ」「この酸味が味わえなくなるのは寂しい」などの声があった。
ユニオンでは粘度の低さを理由にA1ソースの処分セールを実施。沖縄に到着したばかりだという観光客は「(値下げのポップが)目を引くので思わず手に取ってしまった。販売停止するなんてびっくり」。赤嶺店の店員は「休売するということでよく売れている。通常は1本ずつ売れる商品だが、2~3本まとめ買いする人も多い」と話した。
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